多摩動物公園のキリンは、2007年に来園したオス「カンスケ」(現在9歳)を中心に10頭ほどのメスが群れを形成しており、これまで5頭のこどもが無事に成長しました(2016年1月末現在)。
カンスケにはまだまだこれからも活躍してもらう予定ですが、万が一繁殖が途絶えてしまうことがないよう、昨年(2015年)6月、埼玉県こども動物自然公園からオスの「ジル」(現在2歳)を導入しました。
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サバンナエリアにキリンの『ジル』が仲間入り!」(2015年7月24日)
左からナツキ、ジル、カンスケ
キリンは4〜5歳で性成熟するといわれており、おとなになったオスは、メスをめぐって争うことがあります。しかし、まだこどものジルは群れに入った後、カンスケと争うこともなく、昼夜を問わずいっしょにいます。
来園から1か月過ぎた頃からジルは徐々にメスに興味をもち始め、追尾やマウントなど、繁殖につながる行動が目立つようになりました。まだ繁殖能力はないだろうと思いながらしばらく観察を続けていましたが、あるとき、ジルが追うメスは今までカンスケがあまり興味を示さなかったメスばかり……と気づきました。
カンスケは2009年8月から現在まで、ジルは2015年8月から現在まで、メスに対する追尾行動やマウント行動などの記録を取っています。カンスケがこうした行動を示した計 291日のうち、ノゾミ、アオイ、サザンカというメス3頭に対する行動が見られたのは 217日でしたが、これら3頭に対してジルが行動を見せたのは、計43日のうち6日だけでした。
逆に、ジルはナツキ、ユーカリ、アミというメス3頭に計36日行動を見せたのに対し、カンスケはこれらの個体に対して計38日のみという具合です。とくにカンスケはナツキに対して今まで一度も行動を見せたことがありませんが、ジルにとっては一番興味あるメスはナツキなのです。
ただし、こうした行動を見せる日数が少ないからといって繁殖しないわけではありません。カンスケとユーカリの間には今までに3頭のこどもが生まれています。興味深いのは、昨年6月に出産したユーカリに発情が戻った頃から、ジルが猛烈にアタックしているのですが、カンスケは一度も行動を見せません。
血統登録書によると1~2歳の若いオスが繁殖した事例があります。ジルにまだ繁殖能力がないからカンスケとジルの間に争いが見られないのか、カンスケよりジルの体がまだ小さいから争わないのか、あるいはお互いメスへの興味が異なるから争わないのかよくわかりませんが、オスどうしの勢力関係やメスへの興味の変化がどうなっていくのか、今後に注目しています。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕
(2016年02月26日)