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ツダナナフシの脱皮と噴射液
 └─2015/12/11

 多摩動物公園の昆虫園生態園入口に、南西諸島の生き物を展示しているコーナーがあります。展示種のひとつがツダナナフシ。ツダナナフシは、西表島や石垣島、台湾などに分布しているナナフシのなかまです。姿を見て驚きの声が上がることもしばしば……。

 みなさんはナナフシを見たことがありますか? 園内にも生息しているナナフシモドキは体が細長く、枝そっくりで、枝に擬態してくらしています。一方、ツダナナフシはといえば、長さは十数センチとそれほど変わりませんが、体は太くて持つと重みがあり、胸部はごつごつとしてヨロイのようです。その大きさといかめしい体つきに、驚く、というより、ちょっと苦手な方が多いようです。


ツダナナフシ成虫

 でもみなさん、第一印象にとらわれず、少し観察してみてください。ヨロイのような胸部は光沢がありきれいな青色、触角は鮮やかな赤色で、けっこうおしゃれな(?)配色ですし、目も意外なほどにつぶらです。

 見た目がいかめしいとはいえ、自然界では食べられる側の生き物です。ふだんは葉に体を沿わせてじっとしていることが多く、おそらく野外でも、鳥などの捕食者から身を守るためにこうして隠れているのでしょう。

 しかし、それだけではなく、ツダナナフシには身を守るための必殺技があります。なんと刺激臭のある白濁した液体を胸部の背側から噴射できるのです。刺激臭といっても、湿布のような、なじみのあるスーッとする臭いです。

 以前こんなことがありました。ツダナナフシも脱皮を繰り返しながら、幼虫から成虫へと成長するので、飼育ケースの中には脱皮殻がときどき落ちているのですが、ある日脱皮殻をよく見てみると、前足の付け根付近に左右に一つずつ、白い液体で満たされた袋がくっついでいました。触ってみるとすぐに割れてしまいましたが、液体の臭いをかいでみると噴射液でした。脱皮とともに、噴射液の入った袋も脱ぎ捨ててしまうようです。ツダナナフシの面白さをまたひとつ発見した瞬間でした。


脱皮殻。噴射液の入った袋も丸ごと脱いでいる

 さて、少しはツダナナフシに興味をもっていただけたでしょうか? 新年を迎えたら、幼虫の展示を始める予定です。こちらは成虫と違い、多くのみなさんに受け入れられやすい姿かたちをしています。ちょっと昆虫が苦手な方でも、まずは幼虫からツダナナフシを観察してみてはいかがでしょうか? ぜひ昆虫生態園に足をお運びください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕

(2015年12月11日)



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