鳥は、チョウのもっとも強力な捕食者です。チョウは、幼虫の時も変態して親になった後も、鳥に狙われています。チョウの親はそれでも飛んで逃げられますが、幼虫はすばやく逃げることができません。では、チョウの幼虫はどのようにしてわが身を守っているのでしょう。
その方法はいくつかありますが、今回は体色で身を守る例をご紹介します。
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写真1 ナミアゲハ終令幼虫 | 写真2 ナミアゲハ終令前の幼虫 |
写真1はナミアゲハの終令幼虫、つまり蛹になる前の幼虫です。鳥の目を逃れるように、食草のミカンの葉に溶け込む体色と模様をしています。ところが、終令幼虫になる前の幼虫(写真2)は白と黒のツートンカラーで、これは鳥の糞に擬態しているのだと言われています。このようにアゲハの幼虫は体色や模様で鳥の目をごまかしていますが、刺激を受けると「肉角」という強い臭いを放つ器官を頭の後ろから突き出します。これも、身を守るための特徴手段と考えられています。
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写真3 アサギマダラ | 写真4 ツマムラサキマダラ | 写真5 オオゴマダラ |
写真3~5はいずれもタテハチョウ科のマダラチョウ亜科の終令幼虫です。マダラチョウのなかまの食草は、強毒のアルカロイドなどをもつガガイモ科やキョウチクトウ科などの植物です。幼虫も成虫もこれらの毒を体内に溜め込み、自らを鳥にとってとても不味い食物にして身を守っています。さらに、派手な色を鳥に誇示して、「私はとても不味い」と捕食者の鳥に警告しているのだと考えられています。
このように、カムフラージュと警告色は、天敵である鳥から逃れる二つの代表的な方法です。その方法を身につけたチョウの幼虫を昆虫生態園左ウイングで展示しています。ご来園の際はぜひごらんください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 櫻井博〕
(2015年06月05日)