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がんばるチンパンジー「デッキー」
 └─2015/05/15

 今回、みなさんに紹介するのは、チンパンジーの「デッキー」です。デッキーは推定36歳のオスですが、チンパンジーの寿命は40~50年といわれているので、チンパンジーの世界では高齢の部類に入ります。野生個体だったデッキーは小さいころ鹿児島の動物園に来園し、ショーにも出演して人々に愛されていました。おとなになってショーを引退した後、多摩動物公園にやって来ました。

 私がデッキーと初めて会ったとき、彼は私に対してディスプレイ行動(オスが自分の力を示す行動)をとりました。この行動はきっと、私が4月にチンパンジー担当になった「新入り」だからだろうと思っていました。しかし、同じ班の先輩たちに聞いてみると、新人であるなしにかかわらず、男性飼育係に対してディスプレイをするそうです。ただし、オスのチンパンジーにはディスプレイをしないとのこと。


飼育係に対してディスプレイ行動を見せるデッキー。ガラスにぶつかって来ようとしている


 これはデッキーが26歳まで他のチンパンジーと一緒に行動することなく過ごしてきたことが原因として考えられます。なぜなら、チンパンジーは子どものころに群れの中で他の個体のまねをしながらあいさつやルールを学んだり、オスはディスプレイのしかたなどを身につけたりするからです。ただし実際のところは、デッキーのみぞ知るということでしょう。

動画:飼育係に対してディスプレイ行動を見せるデッキー(50秒)

 チンパンジーに対してディスプレイができなくても、デッキーは立派に他のチンパンジーと一緒に群れの中で過ごしています。ふつう、おとなになってからの群れ入りはなかなかうまくいかないのですが、デッキーはオスとして仲間の争いを鎮めようとするなど、十分とは言えないものの、群れの中で一生懸命努力しているように感じます。

 20頭いる多摩動物公園のチンパンジーは、運動場に出すときに毎日群れの構成を変え、激しい喧嘩などが起こらない組み合わせで展示しています。そのため、毎日違ったチンパンジーどうしの駆け引きを見ることもできます。ぜひ、群れの中でのデッキーのくらしぶりを見に来てください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 田口陽介〕

(2015年05月15日)


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