多摩動物公園で、今年もフラミンゴの繁殖シーズンが始まりました。最初の産卵は去年よりも11日早く、2015年3月5日に確認しました。昨年3月の産卵数は18卵でしたが、今年は45卵も産卵しています。孵化も去年にくらべて1週間早く、4月9日には今年初のひなが2羽孵化しました。その後も、多い日には1日に7羽も孵化した日がありました。
一見、順風満帆に見えるフラミンゴたちの繁殖ですが、営巣からひなの巣立ちまでの道のりをご紹介しましょう。
冬の間に求愛行動を通じてカップルになったペアは、交尾を終えると巣を作る場所を探し始めます(求愛行動、とくにそのディスプレイ行動については、
こちらの記事をごらんください)
巣作りの場所として木の裏側が人気のため、毎年激しい場所取り合戦が見られます。おたがいに譲らず突つき合いになったり、ときには営巣開始後に巣をうばわれたりすることもあります。フラミンゴの社会も競争が激しいのです。
場所を勝ち取ったカップルはそこに座り、くちばしで器用に土をかき集め、プリンのような台状の塚を作ります。1組のペアは卵を1個産み、雌雄で交代しながら抱卵します。抱卵中もまだ気が抜けません。他の個体に卵を突き落とされたり、踏みつぶされたりすることもあります。
もう少しで出てきそうなひな
温められて無事発生が進んだ卵は、約1か月後に孵化します。ひなのくちばしには卵嘴(らんし)と呼ばれる殻を割るための突起があり、ひなは卵嘴で内側から小さな穴を開け、自分の力で外へ出てきます。
親の羽の中で温まるひな
出てきたひなは、まだ親と似ていません。くちばしは真っ直ぐですし、羽は白みが強い灰色です。親の羽の下で温まっている姿は、まるで羽毛布団にくるまっているようです。ただし、入ったままだと暑苦しいのか、羽の下や背中からときどき顔を出しています。また、温かくて眠くなったのか、顔を出したまま寝ていることもあります。
両親と散歩するひな
フラミンゴは「フラミンゴミルク」と呼ばれる赤い分泌液を両親が口から与えるなど、ペアが協力してひなを育てていきます。親に守られ、無事に育ったひなは約1週間で巣立ちます。巣立ったひなは、親に付き添われながら、展示場内を散歩し始めます。親はやはり、自分の子が心配なようです。付き添う際には、子がふらふらと歩き回らないよう、親は頭を低くし、子の動きを見ながら誘導しています。
4月29日現在、29羽のひなが誕生しています。無事成鳥になれるよう、ぜひ応援してください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 武山栄治〕
(2015年05月01日)