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寒さに耐えて──冬のライオンの一日
 └─2015/02/06

 暦では立春や雨水で季節の変化を知る時期となりましたが、実際にはまだまだ寒さの厳しい日々が続いています。ライオン園で寒風に耐えるライオンたちも、手足を伸ばし日差しを浴びる日を心待ちにしています。そんな寒さに耐えているライオンたちの姿をご紹介します。

 午前10時前、ライオンバスの始発に合わせて、ライオンたちはライオン園に出て行きます。ライオン園内の餌台(牛骨を取り付けた台)に向かって走るライオン、発情したメスを求めて争うオスたち──こうした朝の喧騒がおさまると、陽は高く昇っています。


陽だまりに集まるライオンたち


 昼前から午後3時頃にかけて、ライオン園の北側東寄り(橋側)の壁沿いが日だまりになり、北風も遮られるので、ライオンたちはこの最高の場所に集まり始めます。成獣のメスと子どもたちのグループや雌雄のペアが集まってきますが、仲よくみんな一か所で「ひなたぼっこ」をするわけではありません。群れの中の微妙な関係によって群れから外れる個体、闘争心を内に秘めて群れから距離を保つ個体、体を寄せてのんびりする個体、ライオン社会も大変です。

 陽も西に傾く頃、最終のライオンバスを見送ると、ライオンたちは小放飼場を抜けて室内に入ります。ライオン舎は、係員用の作業通路を挟んで両側に5室ずつ10室が並んでいます。1室は約12畳(間口360cm×奥行き520cm)の広さがあり、ここに1〜4頭が入ります。係員通路の真下には「シュート」と呼ばれるライオン用の通路になっていて、ライオンたちはここを通って出入りします。日中の闘争などで興奮しているライオンは、一時的に1頭だけで部屋に入れたり、興奮が冷めるまでシュートに留め置いたりします。


室内でくつろぐ3頭


 性別、年令、兄弟や姉妹など、個体の条件によって部屋を分けますが、同室のライオンはたいてい仲がよく、えさを取り合いって争うことはありますが、そうした争いの原因がなくなれば、お互い無関心を装うようにも見えます。むしろ、隣室をうかがうのに一生懸命になり、吼え続けたり、扉を前足で延々と叩き続けたり、視界に入る隣室が気になるようです。そうした行動があまりにもしつこい場合は、対策として目隠し板などを設置することもあります。

 室内に入って30分ほど経つと、昼間の緊張から解放されたように横になるライオンが目立ち始めます。冬を迎え、寒さの厳しいこの季節、背中合わせになったり抱き合ったり、相手の腹の上に足を投げ出したりして、ほほえましい姿でおたがいにくっつきながら眠りに入るようです。

 昼間はメスとペアを組み、近寄って来るペアや他のライオンたちを蹴散らかしていたオス個体も、室内では仲よく「団子三兄弟」の状態で寝息を立てています。

 そして翌朝8時半には、ライオンバス始発に合わせて飼育係の作業開始。新たな一日の始まりです。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 山川宏治〕

(2015年02月06日)


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