インドクジャクはその名のとおり、インドやスリランカ、パキスタンなど、南アジアに生息する大型のキジ科の鳥で、インドでは国鳥に指定されています。豪華で美しい羽をもっていることから世界中の公園や庭園で飼育され、親しまれています。
この美しい飾り羽をもつのはオスだけで、メスに求愛行動をおこなうときに大きく広げられます。広げている羽は尾のように見えますが、実際は尾にかぶさる「上尾筒」、つまり腰の部分の羽です。一方、メスは茶色の地味な色合いをしています。
多摩動物公園では現在3羽のオスのインドクジャクが園内で放し飼いにされています。繁殖期にあたる夏頃、来園されたお客さんに向かって飾り羽を広げ、細かくふるわせながら求愛行動をする姿が人気を集めています。
ではメスはどこにいるのでしょうか? 動物園の正門から真っすぐ緩やかな坂道を登り、「なかよし広場」を越えて右に曲がり、さらに坂を登ると右手にコウノトリがたくさんくらしているエリアがあります。その奥にコウノトリ繁殖のためのケージがいくつかありますが、ここは残念ながら来園者の方々はご覧になれないところです。じつは、そのケージの1つに、オス1羽、メス4羽のクジャクたちがくらしているのです。
今年7月下旬に1羽のメスが産卵し、その後抱卵を始めました。いつもはえさを与えにケージに行くとクジャクたちが集まってくるのですが、抱卵中のメスはじっとその場から動きませんでした。8月末、無事3羽が孵化しました。
孵化後約1週間のインドクジャクのひな
成鳥のえさは小松菜を刻んだものと鶏用の配合飼料ですが、ひなには小松菜を更に細かく刻み、鶏のひな用の飼料、ミールワームを追加して与えました。ミールワームはごちそうなので、他のクジャクも寄ってくるのですが、母親であるメスが「シー、シー!」とかすれたような声を出し、ひなたちに食べるように促しながら、他個体を寄せ付けませんでした。
冠羽が出てきました
だいぶクジャクらしくなりました
ひなたちは順調に成長し、11月に個体識別のためにつかまえた際、血液を採取して雌雄識別の検査をすると、3羽のうちオスが1羽、メスが2羽でした。近い将来、オスのひなが成長し園内に放されることになり、メスのひなたちは新しい命をつないでいってくれることでしょう。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 佐々木真己〕