「マレーバクの子はマレーバク」は当たり前のことですが、親と似ても似つかないウリ坊模様の子を見ていると、何か別の生き物なのでは?とつい思ってしまいます。
多摩動物公園では2014年8月16日にマレーバクの「ユメ」がオスの子を出産し、「アタル」と名付けました。生後1か月を過ぎたアタルは順調に成長しています。今回はアタルのこの1か月間の成長記録から「この子も立派なマレーバクなんだな」と思ってしまったエピソードをご紹介します。
飼育担当者として動物が出産した際、まず心配することは授乳です。母親が生まれてきた子に母乳を与えているか、子はちゃんと母乳を飲めているか、授乳を確認するまで安心できません。ユメは今回の出産が初めてで、ちゃんと授乳するか心配しましたが、出産当日に確認することができました。
授乳が確認できると、次の心配事は子のうんちです。母親から初めてのごはんを与えられるとおなかが動き出し、子はうんちをします。アタルの場合、授乳はすぐに確認できましたが、うんちの確認がなかなかできませんでした。母親が子のうんちを食べてしまうことはよくあるので、きっとそうなのではないかと思っていましたが、うんちを予想外の場所で発見し、思わずアタルもちゃんとマレーバクなんだなと思ってしまいました。
みなさんはどこにアタルのうんちがあったかわかりますか?
答はアタルとユメの部屋にある扉のレール部分。幅わずか4センチほどのレールには掃除のときに流した水がたまった状態になります。アタルはその水の中に上手にうんちをしていました。
じつはマレーバクは水中でうんちをします。多摩動物公園のマレーバクたちもみな運動場にあるプールや池の中でうんちをします。しかし、室内には大きな水場がないため床の上に排泄するのですが、アタルはちゃんとマレーバクらしく自分サイズの水を部屋の中で探し出し、そこにうんちをしたのでした。
アタルはまだウリ坊模様をしていますが、これから少しずつ模様が変化し、生後6か月くらいで大人の模様に完全に変わるといわれています。
子どもらしいマレーバクを見られるのは今だけ! ぜひマレーバク舎へお越しください。
・「東京ズーネットBB」では、マレーバクのアタルと母親ユメを動画でご紹介しました(
こちらです)。
写真上:マレーバクの「アタルです!」
写真中:授乳中
写真下:もう餌も食べられるようになりました
〔多摩動物公園南園飼育展示係 伊藤香緒里〕
(2014年10月03日)