緑色の体色と全長の4分の3にも及ぶ長い尻尾をもつサキシマカナヘビは、成長すると全長約30センチにもなる日本最大のカナヘビです。鮮やかな体色から外国の種と思われがちですが、南西諸島の石垣島、西表島、黒島などに生息する日本産のトカゲのなかまです。
多摩動物公園では、昆虫生態園南西諸島のいきものコーナーでオス1匹、メス2匹合計3匹を展示しています。
このメスたちが2014年3月から断続的に産卵しています。産卵直後の卵は白色で長径1〜2センチ程度、大人の小指の爪よりも小さいくらいでしょうか。ニワトリの卵をそのまま小さくしたような外見です。その卵を気温25℃、湿らせたバーミキュライトを敷いた容器内で管理すると、42日ほどで孵化します。
生まれた子どもは、すでに緑色の体色で、頭がやや大きいことを除けばほとんど親と同じ形をしています。頭から尻尾の先までは11センチくらい、小さな卵の中で輪のようになって入っていたとは思えない大きさです。
今回、孵化の瞬間を動画撮影することに成功しました。卵から頭の先が出てきたところで撮影を開始したのですが、その状態からなかなか進みません。待つこと1時間。あるとき意を決したように、一気にニョロニョロっと卵から飛び出してきました。出てきた子どもは「ここはどこだ?」と言わんばかりにキョロキョロしていましたが、周りで見ていた私たちにびっくりしたのか、あわてて走り出してしまいました。
【動画:サキシマカナヘビの孵化】
その後、孵化用の容器から通常の飼育展示ケースに移し、落ち着かせてから若齢コオロギを与えたところ、すぐに食べはじめました。このまましっかりと餌を食べて順調に成長することと思います。
生まれた子どもも南西諸島のいきものコーナーで展示しています。ぜひ見にいらっしゃってください。
写真:孵化したサキシマカナヘビ
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野啓一〕
(2014年08月01日)