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オランウータンにオスの子誕生、アピと命名
 └─2014/07/18

 2014年6月19日、多摩動物公園のボルネオオランウータンの「チャッピー」(41歳)が6番目(死産含む)の子を無事出産しました。性別はオスです。日本のオランウータンの出産記録の中では、最高齢出産となりました。

 なお、DNAによる父子判定の結果、父親は「ボルネオ」と判明しました(お知らせ

 これまで、日本ではオランウータンの寿命はもっと短いと考えられており、40歳代での出産は母子ともに負担が大きいと思われていたため、30歳代で繁殖を制限する傾向がありました。しかし、近年野生では推定40歳代のオランウータンが子どもを連れているところが観察され、また2005年には豊橋のスマトラオランウータンが40歳で出産し、母子ともに健康でまったく問題ないという嬉しい報告もありました。

 そこで、チャッピーは育児経験が豊富なオランウータンであることから、6度目の繁殖に踏み切りました。

 出産当日の6月19日も娘の「ミンピー」と朝から放飼場でいつもどおり過ごしていました。しかし、11時40分ごろ「破水した」と来園者の方から通報していただき、寝室に入舎させるため扉を開けると、チャッピーはすごい勢いで戻ってきました。そしてすぐに寝室脇にある格子につかまって力み始め、破水から8分後には出産という超スピード安産となりました。子どもはすぐに産声を上げ、12時40分には授乳も確認できました。

 今回、ミンピーは兄の「ポピー」がそうしたように隣の寝室で出産の瞬間を見学することができました。出産時には、ビックリして寝室の端の格子にしがみ付いていましたが、これまで、「リキ」(1歳)とのふれあいの経験があったからか、ポピーのように不安そうにじっとしているのではなく、すぐに近寄りじっと観察し、触りたいと格子から指を出したり、枝で子どもの頭を触ろうとして母親に叱られたりと積極的な姿勢を示しました。

 安産でホッとしたのも束の間、なんとへその緒が子どもの左腕を一周するように絡まり下でねじれています。出産時のへその緒は2センチくらいの太さがあり、その下には胎盤がついているので、子どもの腕がへその緒に圧迫され血液が流れないために動かなくなってしまう可能性がありました。チャッピーに声をかけて取るように促し、チャッピーも気にして何度もへその緒に手をかけますがうまく外れません。とりあえず、ねじれの部分が少し緩まり、腕の下に空間ができたので、そのままようすを見ることにしました。通常へその緒は1、2日で2〜3ミリくらいの太さになり、胎盤の負荷もかかって子どものへそから取れるのですが、今回は腕に絡まってしまったためか、取れるまでに4日もかかりました。

 子どもの名前は、来園の方々に投票していただき、インドネシア語で「炎」を意味する「アピ」となりました。かわいいアピをぜひ見にいらしてください。

写真:オランウータンの子「アピ」、腕にへその緒が絡まっている

〔多摩動物公園南園飼育展示係 清水美香〕

(2014年07月18日)



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