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オバケコロギスの巣作り?
 └─2013/12/20

(追記:2013年12月に展示再開した多摩動物公園のオバケコロギスは、残念ながら2014年1月16日に死亡しました。現在は展示しておりません)

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 多摩動物公園昆虫園本館で展示を再開したオバケコロギスは、迫力ある大きさが魅力である反面、頻繁に展示レイアウトを壊してしまう困った昆虫でもあります。隙間や穴を掘るのが好きなうえ、力も強く、重い石などでもない限り、たいてい動かされてしまうからです。2012年に飼育したときには、短い期間に何度もレイアウトの変更を余儀なくされた、飼育担当者泣かせの生き物でした。

 そんなこともあり、今回は展示用のケースを準備する際、掘られたり隠れられたりしてもよいように、あらかじめ潜りやすい位置を限定させてみました。また、昨年は岩だらけの展示だったのですが、今年は少し緑を増やそうと造花(人工観葉)を設置してみました。

 オバケコロギスを移してみると、予想通りこちらの意図した場所の周辺をうろつき始めたのですが、思わぬところで予想外の事態が起きました。

 展示開始の翌朝、なぜか造花の半数が切り刻まれてケース中にばらまかれていたのです。造花が齧られたり、誤食されたりすることはよくあることなのですが、それはふつう草食昆虫の場合で、肉食傾向の強いこの種には考えにくいことです。しかも人工の植物をわざわざ切るなんて、担当者の私はハキリアリくらいしか見たことがなかったため、非常に驚かされました。

 餌と勘違いしたとは思えないのですが、とりあえずその日は造花をすべて回収してようすを見ました。

 翌日になると、オバケコロギスが落ち着き、ほぼ定位置の隙間でくらすようになりました。その際、昨年の個体では見られなかった、巣らしきもの(周囲をきれいに埋めた個室のような空間)を作り始めました。その日の閉園後、落ち葉や床材としてケースの底に敷いたヤシガラチップを、器用に大アゴでくわえて引き込んでいるところにも遭遇しました。
 この一連の行動から、造花は落ち葉と同様、巣材として周辺の壁代わりにするには大きくて使いづらいため切り刻んだのではないかと考えました。


 飼育担当者もレイアウトに苦慮しましたが、オバケコロギス側も住みよい居住空間形成のために試行錯誤していたようです。今後も観察を続け、この行動の詳細を解明していければと思います。

 日中はなかなか動かない昆虫ですが、現在は新しい造花を展示に設置し、運がよければ切ったり巣に引き込んだりするようすを見ていただければと期待しています。

「オバケコロギスが帰ってきた!」(2013年12月14日)

写真上:アクリル板下の空間に入るオバケコロギス(中央)、周りを巣材で埋めている
写真下:(左)もともとの造花(右)切られた造花

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕

(2013年12月20日)



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