ニュース
モウコノウマの三姉妹、「アジアの平原」に移動
 └─2013/05/31

 2013年4月26日、多摩動物公園では「アジアの平原」がオープンし、スイスから来園したモウコノウマのオス「クヴァジー」とメス「パーニャ」「ザルツァ」3頭をお披露目しました。

 その後当園生まれの3姉妹「ダイアナ」「エーコ」「フルール」が加わり、6頭のハーレムが誕生しました。今回は姉妹たちの引っ越しのようすをご紹介します。

 3姉妹のモウコノウマは、今から30年以上前に建てられた旧施設で生まれ育ち、2013年4月中旬までそこで過ごしました。

 新施設まで距離にして1.3キロの移動に際しては「麻酔をかけず輸送箱に入れて移動させること」というミッションがくだされ、わずか1週間後に敢行しました。

 モウコノウマは私がいままで携わってきた動物の中でも群を抜いて神経質な種なので、日頃から声をかけ手渡しでリンゴを与えたり、柵越しにブラッシングをするなどして馴致に努めました。

 スイスから来た個体が使用した輸送箱を利用したのですが、彼女たちには小さすぎる箱で、自ら入るよう仕向けるのは至難の業でした。それぞれの寝室の出入口に輸送箱を置き、箱のいちばん奥に餌をつけてお腹がすいたら摂餌のために箱に入る、という算段です。しかし、彼女たちの性格からすれば、それが容易でないことは初めからわかっていました。箱入れのトレーニングをする以前から馴致は継続しておこなっていましたが、今はそこから築かれた信頼関係と彼女たちの度胸を信じるしかありません。幸いやや小柄で若いフルールは、好奇心と身軽さから、箱をつけた2日後に全身を箱に入れました。日を追うごとに箱に上手に入り留まるようになったフルールは、7日目に平原へ移動することができました。

 フルールより体が大きく性格も頑固なエーコとダイアナは、もう少し時間がかかりました。ウマの脚は非常に繊細で、まるでそこに目がついているかのように小さな変化を察知します。脚元にはかなりの段差と隙間があったので、それを越えてまで箱の中にある餌を食べる気にはならなかったようです。日に何度も箱に入るトレーニングをし、ダイアナは移動前夜、エーコは移動当日となる8日目に、初めて全身が入りました。箱はトラックで園路を移動し、新しい寝室に向かいました。

 移動後、彼女たちと私との関係は悪化すると思いきや、ますます信頼度が増したように思います。平原で過ごす彼女たちを見かけたら、ぜひ今回の努力を誉めてやってください。

写真上:身軽な「フルール」(体重約230キロ)は箱の段差も平気
写真中:「ダイアナ」「エーコ」は畳4枚重ねて段差を埋める
写真下:フォークリフトでトラックに載せる

〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤麻里子〕

(2013年05月31日)



ページトップへ