オオカミといえば「遠吠え」というイメージをおもちの方が多いようで、多摩動物公園のタイリクオオカミ展示場の前では、毎日のように来園者の方による遠吠えが聞こえます。みなさん一生懸命に遠吠えをするのですが、それにオオカミたちが答えてくれることは、残念ながらありません。
オオカミは、パックと呼ばれる血縁のある群れを作ってくらしています。遠吠えは、パック同士が縄張りを主張したり、離れた仲間と連絡を取ったりするのに使われます。頭数が多くて力のあるパックほど遠吠えが多く、頭数が少なく力の弱いパックではあまりおこなわれないそうです。遠吠えがきっかけとなってパック同士の闘争となることもあるからです。
動物園では朝や夕方におこなうことが多く、気分が高まったときなどが多いようです。とくに毎朝のように聞かれるのが、開園の音楽に合わせての遠吠えです。飼い犬でも救急車の音や定時になる音楽に反応して遠吠えすることはよくありますが、多摩のオオカミたちは、一定の音に反応しているというよりは毎日の習慣になっているようです。
夕方の餌を食べ終わり、少し落ち着いたころにもよく聞かれますが、いずれもみなさんに見ていただくには難しい時間なのが残念です。
最近は群れを追い出されてしまったロンという個体が、部屋の中で頻繁に遠吠えをするので、まれにそれに反応して日中におこなわれることがあります。とはいえ、開園時間中に聞かれるのは運が良くて一日一回ほどですが……。
野生のオオカミの遠吠えを聞いたことがあるでしょうか? 「ウォーン」という長鳴きを繰り返すというイメージが強いかもしれませんが、実際はさまざまな鳴き声が混じっての大合唱です。長鳴きもあれば、「キュイーン」という鼻を鳴らすような声、「ワァオ、ワァオ」と波のように揺れる声などなど。
パックによる迫力の大合唱を動画でごらんください。
【遠吠えの動画】
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写真上:多摩動物公園のパック
写真下:「遠吠え」するオオカミ
〔多摩動物公園南園飼育展示係 熊谷岳〕
(2013年01月11日)