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チンパンジー村の勢力図
 └─2012/06/01

 多摩動物公園では、22頭のチンパンジーを飼育しています。チンパンジーは群れでくらし、オスにもメスにも群れの中での序列(優位性)があります。オスの序列の中で最優位にいるオスは「第一位オス」あるいは「アルファオス」と呼ばれています。

 現在、アルファオスの地位にいるのは「ケンタ」です。アルファオスの重要な役割の一つが群れの秩序を守ることで、たとえば、メス同士のケンカの仲裁もおこないます。仲裁のためには、加害者と被害者を見分けて、被害者の味方についてやらなければなりません。それを間違えると、被害者の方は納得がいかず、自分に味方してくれるほかのメスたちと一緒にケンタを追いかけるという事態にもなります。

 一方、14頭いるおとなのメスたちの間にも序列があります。こちらはなかなか複雑です。メスの2大巨頭が「ピーチ」と「ナナ」です。ピーチもナナも体が大きくオスのような体格ですが、とくにピーチは、オスを自分の味方につけることがとても上手なため、序列の上位を守っています。

 最近、ピーチとナナが互いにグルーミングをし合ったり、2頭で並んでほかの個体に圧力をかけている姿をよく見かけます。単純に仲が良いというのとは少し違い、2頭で同盟を組むことによってそれぞれの地位を守ろうとしているのではないかと思われます。

 反対に順位の低いメスの筆頭が「サザエ」「マリナ」です。サザエは、ほかの者たちの争いには巻き込まれたくないとばかり、ポツンと1頭で離れて過ごすことが多い個体です。マリナはとても勝気で、自分より上位の者にまで向かっていく無鉄砲な性格です。ただ味方を作ることが下手なようで、ケンカを売っても加勢してくれる者がいないため、負けて泣きっ面で逃げていく姿をよく見ます。

 メスの序列は、発情の有無、味方の有無など、さまざまな条件によって変動するので見極めるのが難しいのですが、個体を絞ってじっくり観察してみるとそれぞれの関係が少しずつ見えてくると思います。

写真:メスの2大巨頭のナナ(右)とピーチ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 牧村さよ子〕

(2012年06月01日)



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