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木にのぼるチンパンジー
 └─2012/04/20

 多摩動物公園のチンパンジー舎には、丸太を組んで作ったやぐらや高さ15メートルのタワーがある広い運動場のほかに、ガラス越しにチンパンジーを観察できる室内展示場があります。ここでは、工事などで運動場が使えないときや、夕方チンパンジーが寝室に帰った後、夕飯を食べてから寝るまでのようすが見られます。室内には、チンパンジーが休むためのハンモック、移動の足場にしたりぶら下がって遊んだりできるロープや消防ホースが取り付けてあり、快適に楽しく過ごせるようなくふうをしてあります。しかし、植物がたくさん生え、夏には緑でいっぱいになる外の運動場に比べると、どこか無機質な感じがしていました。

 その室内展示場に、先日ドーンと大きな木がはえました。といっても、もちろん本物ではなく、鉄骨やモルタルでできた擬木です。

 擬木は太い所で幅80センチ、重さは1トンもあり、運び入れるのに工事業者の方も一苦労でしたが、翌日には早速サザエとジンを展示場に移動させました。2頭は見慣れない物体に驚いたようで、離れた場所からそっとうかがっていましたが、しばらくするとジンが擬木に近づきました。口を尖らせて威嚇しながら、擬木に一発パンチをしたのです。さすがは男の子!と思ったのですが、それが精一杯だったようで、すぐにハンモックにのぼるとその日はもう擬木に触りませんでした。

 一方サザエは、あらかた餌を食べるとおもむろに擬木に近づき、枝を使って幹の部分をほじり始めました。じつは、幹にはいくつか穴があいていて、そこにピーナッツなどのおやつが隠してあるのです。サザエは目ざとくそれに気付いておやつを食べ、次にてっぺんまで登ると、差しておいたカシの枝をむしゃむしゃと食べ始めました。なんという順応性でしょう! 

 期待どおりに擬木を活用し、まるで本物の木にのぼって葉っぱを食べているようでした。擬木のてっぺんは、サザエのお気に入りの場所の一つになりました。ジンも次の日から一緒に擬木にのぼるようになりました。

 まだ小さいジンと小柄なサザエには、大きな擬木にのぼるのが少し大変そうだったので、ロープや消防ホースで足場を増やし、居心地が良くなるように少しずつ環境を整えています。「ここにロープを張ったら」「床にウッドチップを敷いて雰囲気をよくしたい」など、飼育担当者も考える楽しみが増えました。

 室内展示場でサザエとジンが見られるのは、運動場のチンパンジーが寝室に帰る16時過ぎから閉園までの間です(都合により時間が変わることもあります)。ぜひ、木にのぼるチンパンジーの姿を見にきてください。運動場とはまた違った雰囲気を味わうことができるでしょう。

写真上:擬木の入った室内展示場
写真中:擬木を警戒するサザエとジン
写真下:擬木に登るサザエ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上純〕

(2012年04月20日)



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