多摩動物公園では、今までボルネオオランウータンのオス「キュー」と「ボルネオ」のいずれか1頭を、おもに大きい放飼場(第1放飼場)に展示していました。
オランウータンは群れを作らず、オスは単独行動なので、オス同士のトラブルを回避するために1頭で飼育管理しています。
ただ、いくら体の大きなオスでも、面積の広い放飼場ではなかなかその迫力が伝わりません。
そこで第1放飼場を親子やメス4頭中心の展示に変更し、オスは面積の小さい第3放飼場で展示することにしました。そのため昨年、やぐらを取り換えるときには、力のあるオスでも壊されないように強度を増して新設しました。
キューとボルネオは、担当者の心配をよそに、初めて第3放飼場に放飼したときも興奮することなく、新しくなったやぐらをひととおり軽く見て回る程度でした。
キューは3基あるやぐらのなかでも来園者に一番近いやぐらの上がお気に入りのようで、一日の大半をそこで過ごします。気が向けばガラスの前まで行き、その場にじっと座り、いかにも観察するかのように人の顔を見ています。
ボルネオは建物の出入口付近の通路の中を覗き込み、「早く帰りたいよ」とでも言っているようにその場に座ることが多いのですが、帰れないことがわかると、あきらめてほかの場所に移動します。
オスを第3放飼場に展示したことで、より近くで観察することができるようになりました。メスと比べ体が大きく毛の長いことがよくわかります。また、おとなのオスの特徴である顔の左右にある「にくひだ」のようなもの(フランジと呼びます)も観察できます。
今後も不定期ですが第3放飼場でのオスの展示をおこないます。運がよければ豆の木(垂直に立てた木に穴を開けて中にピーナッツが入っている給餌器)を使っているようすが見られるかもしれません。
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「オランウータンと豆の木」(2011年07月15日)
写真上:第3放飼場で過ごすボルネオ
写真下:「豆の木」で奮闘中のボルネオ
〔多摩動物公園南園飼育展示係 島原直樹〕
(2012年02月24日)