2011年度から多摩動物公園のシャモアの飼育担当になりました。
シャモアは国内での飼育頭数が3頭で、すべて多摩動物公園で飼育しています。大変臆病で、いつも遠く離れたところに座っていることが多いため、よくわからないことがたくさんありました。
その中のひとつが「どんな鳴き声を出すの?」でした。そういえば鳴き声を聞いたことがないのです。
着任直後の4月はじめ、オスのモンブランの蹄が伸びすぎたので捕獲し、3、4人がかりで押さえて蹄を切ったのですが、そんなときでも一切声を出さなかったのでした。
ところが、サマーナイトのイベントで辺りが真っ暗になり、来園者も少ないときでした。ブブ……ブブブ……という音が断続的に聞こえてきました。最初はどこかでカブトムシがひっくり返って暴れているのだろうと気にもしませんでしたが、何か違うなと思い注意すると、音の聞こえてくる方向にモンブランがいて鳴き声を出すときの姿勢をして口を動かしています。ヤギであればそこでメェーッという声が聞こえてくるのでしょうが、ブブ……ブブブ……という空気が漏れるような、カブトムシが暴れているような音でした。
さらに隣の部屋のメスのアルプスも、モンブランにこたえるように同じ声を出しました。
担当になって4か月で、初めてシャモアが鳴くところを確認しました。ほかの飼育担当者も昼間同じような声を聞いたといいますので、夜間だからとか人が近くにいないから鳴いたというわけでもなさそうです。
鳴き声というよりも音という感じなので、今まで聞いていても気がつかなかったのかもしれません。できればいつか録音したいと思っています。
鳴き声は季節的なものなのか、ほかの鳴き声も出すのか……。まだまだわからないことが多い動物ですが、観察してみるとまたなにか新たな発見があるかもしれません。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 永田典子〕
(2011年08月12日)
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