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ハキリアリの新女王アリ誕生!
 └─2004/11/12

 ハキリアリは「葉切りアリ」。葉っぱをかみ切り、「パラソル」のように持ちあげて運ぶことから、「パラソルアント」とも呼ばれています。写真は上から、新女王、女王の蛹、葉を運ぶ働きアリ。

 葉は巣の中にもちこんで、細かくかみ砕き、キノコを栽培します。キノコといっても、茎があるわけではなく、白い塊のような菌類です。これがハキリアリの食糧になるのです。

 巣に葉を持ちこむのは、中くらいの大きさの働きアリ。その葉を、もう少し体の小さい働きアリが取りかこみ、1ミリくらいの破片にかみくだきます。この破片を小さなボールのようにまとめあげ、積みあげていくのです。そして、そこに菌糸を植えつけると、菌を育てる畑(菌園)のできあがり。

 しばらくすると、菌園はスポンジ状に変化します。手に持つと、シフォンケーキのようだそうです。

 多摩動物公園で飼育展示をするためには、いろいろと苦労もありました。なぜなら、飼育施設から逃げ出してしまうと、植物の「大害虫」となってしまうため、脱出をふせぐためのしっかりした施設が必要だからです。しかし、二重構造の飼育室や滅菌器などの準備を2001年から進め、2002年10月、日本ではじめてハキリアリの展示が実現しました。

 南北アメリカには、菌を栽培するアリが約10属 200種ほど知られていますが、そのうち「ハキリアリ」は2属数十種が記載されています。昆虫園で展示しているのは、ペルー産の Atta sexdens です。

 2002年10月以降、2003年1月にあたらしいコロニーが昆虫園に到着しました。2004年8月下旬、新コロニーから大きな幼虫があらわれ、9月中旬に蛹化、10月中旬に羽化がはじまりました。

 11月現在、すでに約 200頭の新女王アリが誕生。また、コロニーの一部を切り離した集団からオスが生まれています。繁殖につながるかもしれません。

 昆虫園では大きなケースを利用して、葉を運ぶすがたや、菌園のようすも観察できるように工夫しています。成熟したコロニーでなければ見られない新女王アリを、ぜひごらんください。

・東京ズーネットの「東京ズーネットBB」よりハキリアリの動画はココ。じょうずに葉をかみ切るようすが見られます。

(2004年11月12日)



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