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オランウータンの掃除とガーデニング
 ──10/22
 この夏の猛暑はオランウータンたちにもかなりこたえたようです。それでも、とくにメスのジプシー(推定48歳)は、氷やジュース入りのペットボトルを味わったり、麻袋をかぶったり、うちわを使ったりして、きげんよく過ごしていました。でも最近は、そうじやガーデニングにも精を出しています。

 とくにこの夏から、おもに雑巾とバケツ、さらにはタワシ、デッキブラシ、柄つきタワシ、洗面器もあたえています。飼育舎の屋上からいろいろ投げてやると、まっさきにやってくるのは3頭のうち、チャッピーとポピーですが、すぐ離れてしまいます。
 しかし、最後にやってくるジプシーはちがいます。まず、バケツに自分で水をくんで雑巾をつけたり、池の水に雑巾をひたしたりしてから、両手でグイッとしぼります。そのあと両手でひろげ、ときには「パンパン」と振ってから濡れた手をふき、ちょっと嗅いだりして、さらにまた濡らしたり、しぼったり。

 そして、床や壁、ときには柱や鏡をふき始めます。とくに気に入った石が池のまわりにあるので、池周辺やコンクリートの床は、いつもきれいです! 今年の夏は暑かったせいか、そうじをしながら、汚れた雑巾で顔をふくこともよくありました。

 タワシもしっかりつかんで、すばやくていねいに、音がするほど力強くみがきます。最初、タワシを雑巾のようにしぼっていたのですが、しぼらなくてもよいことをすぐに理解し、いまではサッサッと振って水を切っています。
 とくに教えたわけでもないのに、すぐ何に使うか理解するのは感動モノ。私たち飼育係の作業を横目で見ながら、ずっとやりたかったのかもしれませんね。

 オランウータンは本来、樹の上でくらす動物。でも、ジプシーの最近のお気に入りはガーデニングです。7月ごろから植木鉢や園芸用シャベルをあたえたところ、さっそく土を掘って鉢に入れたり、雑草を集めて鉢や麻袋に入れるようになりました。
 穴掘りも上達し、かたい土は前もって鉢やバケツで水をかけて柔らかくしたり、両手や足を使って体重をかけながら掘ることもあります。ちゃんと、道具を水ですすいでいるすがたも見られました。

 東京ズーネットBBの動画には映っていませんが、軍手にも興味シンシンです。ちゃんと手に(あるいは足に)はめようとします。チャッピーも得意になって足や手にはめて闊歩していますが、ジプシーのこだわりは、指を1本ずつきっちりはめること。たのしそうに指を動かしています。
 遊び道具をあたえることによって、高齢のジプシーはずいぶん活発になったようです。すこし涼しくなって水に手をつけることが減ったようですが、あらたな道具をわたして、たのしく過ごしてもらおうと思っています。
〔多摩動物公園飼育課 黒鳥英俊〕

※オランウータンの動画を「東京ズーネットBB」最新号でごらんください。東京ズーネットのトップページから「TokyoZooNetBB」をクリック。

(2004年10月22日)



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