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シロオリックスの母子
 └─2011/06/17

 2011年4月6日、多摩動物公園のシロオリックスにメスの赤ちゃんが誕生しました。父親は「クラウン」(3歳)、母親は「ブランチ」(13歳)で、ブランチは2007年11月以来の出産で、4産目となります。

 3月中旬になると、ブランチの腹部がかなり大きく目立つ状態になり、動きもゆっくりとしてきましたが、出産前日まで通常通り、群れと一緒に広い運動場へ出していました。
 出産当日の朝、運動場へ出そうとしましたが出たがらず、陰部に少量の出血が見られたので、産室に入れることにしました。
 1時間後には破水しているようすで、さらに1時間経つと子の足先が見えていました。その15分後には無事出産、あっという間の出来事でした。

 出産の日は休園日で、静かな園内を見渡すとサバンナ周辺の桜の木々が咲き始めていたので、「咲く、開花する」という意味の「ブルーム」(bloom)と名付けることにしました。

 ブランチにとっては久しぶりの我が子でしたが、赤ちゃんの体全体を舐め、よく面倒を見ていたので、職員一同ひと安心です。翌日にはしっかり立っている姿や授乳も確認できました。

 4月8日には体重測定や個体識別の耳標をつけることにしました。しかし、この作業のときだけは母親を産室から出さなければなりません。初産の母親だと激しく抵抗し、落ち着きがなくなることが多いのですが、さすがはブランチ!作業終了後に産室に戻しても、落ち着いて子どもの体を嗅いだり舐めたりした後、静かに子どもに寄り添い、そして角を立てて我々を睨みつけました(笑)。

 誕生からちょうど1週間後の4月13日、母子をフェンスで囲まれた小運動場に初めて出すことにしました。キリンやシマウマがいる運動場へ出すにはまだまだ幼く、3~4か月は小運動場内で過ごします。その間にたくさんおっぱいを飲んで、自分で餌も食べられるようになって、成長を続けます。
 オリックスだけではなく、キリンもシマウマも自分が生まれた場所から初めて外へ出るときは不安が大きく、扉を開けて母親が先に出てもすぐには出ようとしません。少したってから、まるで低いハードルがあるかのように境界線をピョンと飛び跳ねるように出て行きます。私はこの瞬間が好きで、いつも微笑ましく思います。

 約2か月半たった現在、角は10センチメートルほどに伸び、全身茶褐色だったのが、大人と同じ体色に変化しつつあります。サバンナの一員として広い運動場へ出るためには、まだいくつかのハードルを越えなければならないでしょう。

写真上:出産当日
写真下:2011年6月15日撮影の母子

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2011年06月17日)



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