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ナベコウのひなの孵化を手伝いました
 └─2011/06/10

 多摩動物公園育雛舎前の鳥舎では現在、ナベコウのペアが熱心に子育て中です。このペアは2011年3月中旬から産卵を始め、全部で5つの卵を産みました。

 4月に検卵すると、すべてが有精卵と判明しました。5羽を一度に育てるのはさすがに大変です。そこで、2卵はモウコノウマ展示場上のコウノトリ舎にいるナベコウのペアに預けることにしました。

 4月20日に最初のひなが無事孵化。翌21日午後に2羽目が孵化し、同時に3羽目が殻をつついているのを確認しましたが、次の日の午後になっても3羽目が孵化しません。順調と思っていたのですが、すでに1日経っていたため、飼育係が孵化を手伝うことにしました。

 まず、外気に触れて乾いてしまったひなの体や卵膜を、水で充分に湿らせます。その後、卵の丸みの大きい方にある気室(空気の部屋)に沿って、ピンセットで少しずつ円を描くように殻を剥いていきます。卵内には血管が張り巡らされており、未熟なひなの場合、体と卵内の血管がまだ繋がっているので、傷をつけると出血してしまいます。そこで、血管が通っていない気室に沿って殻を剥いていきます。

 ひなのくちばしを確認したら、くちばしを持って外にそっと引っ張り出します。手伝いはこれで終了です(作業のようすは右の写真をごらんください)。

 写真を見て「殻が半分以上残っているのに終わりなの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。これは、ひなが未熟だった場合、孵化準備が整うまで待ってやる必要があるためです。また、ひなを親に戻す場合、さっきまで卵だったわが子が突然ひなとして現われると親が自分の子として認識できない可能性があるので、殻を残しておきます。

 終了後、すぐ両親に戻すと、夕方には無事孵りましたが、体が小さく、残念ながら5月初めに死亡してしまいました。

 別のペアに預けていた2卵も無事に孵化し、多摩動物公園では現在4羽のひなが順調に育っています。孵化直後は真っ白でふわふわした羽毛ですが、孵化後1か月以上経った今、体もすっかり大きくなり、親と同じ黒い羽毛が白い羽毛の下から顔をのぞかせるようになりました。ひなの成長は早く、あっという間に親と同じ姿になってしまいます。ぜひお早めにごらんください。

写真上:殻を破る手伝いをしている
写真中:手伝い終了後のひな
写真下:孵化後1か月のひな2羽と両親

〔多摩動物公園南園飼育展示係 宇野なつみ〕

(2011年06月10日)



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