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こいのぼりとチンパンジー
 └─2011/05/13

 自然の丘陵を活かした多摩動物公園は、春になると樹木が大変美しくなります。そんな新緑が美しいチンパンジー舎で、日本の伝統文化を利用した展示をおこなったので紹介します。

 5月5日は「子供の日」です。昔から日本では子どもの健やかな成長を願って、こいのぼりをあげる習慣があります。動物園でも、家庭で不要になったこいのぼりをいただき、例年はゴールデンウイーク終了まで、2011年は5月末まで正門近くで多くのこいのぼりをあげています。しかし、このこいのぼり、毎年空にあげていると退色したり、裂けてきたりして、だんだん劣化していきます。

 今年はその劣化したこいのぼりを有効活用し、チンパンジーたちに楽しんでもらおうと5月4日と5日に放飼場へ設置しました。
 「こいのぼりに一番関心を持つのはどの個体か?」飼育係の予想は、アンナ(6歳)でした。アンナは放飼場に竹を設置したときも、竹のしなりをじょうずに生かし、楽しい遊具としてほかのどの個体よりも利用する機会が多かったからです。

 まず、4日はヤグラとタワーにそれぞれこいのぼりを1尾ずつ設置し、チンパンジーたちを放飼場へ出しました。案の定アンナが一番に飛びつき両方のこいのぼりを引きちぎりました。顔面をこいのぼりで覆ってロープを渡ったり、弟のマックス(3歳)と取り合いをしたりしていました。

 好奇心旺盛なほかの子どもたちもすぐに参戦し、ボンボン(5歳)とジン(2歳)がこいのぼりで引っ張り合いをしたり、破れた切れ端を顔に付けて歩いたり、とても活発に利用していました。

 また、少し時間がたって子どもたちの興奮が冷めてくると、今度はミミー(推定55歳)がアンナの持っていたこいのぼりをむんずとつかんで横取りし、タワーの上でこいのぼりを使ったベッドを作り、「よっこらしょ」といった感じで横になっていました。
 その後も多くの個体がこいのぼりの切れ端を持ち歩いたり、頭に被ったりしていました。

 5日は3尾設置しました。この日は1尾の頭とシッポの部分をヤグラに留めてこいのぼりが泳いでいるようにしてみました。こちらもチンパンジーたちに好評で、こいのぼりを駆け上がったり、駆け下りたりするマックス、ボンボン、アンナに、お客さんから何度も感嘆の声があがりました。
 しかし、その固定したこいのぼりも、ものの数分でチンパンジーたちにはずされてしまい、ボロボロになるまで一日中よく利用されました。

 2日間、お客さんにもチンパンジーにも楽しんでもらえたので、一生懸命設置した甲斐がありました。来年また劣化したこいのぼりを出す場合には、放飼場へ設置すると思いますので、子供の日にはぜひチンパンジー舎へお越しください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水美香〕

(2011年05月13日)



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