クロツラヘラサギを飼育している動物園は、世界でも多摩動物公園だけ。じつにめずらしい飼育動物なのです(追記:その後、多摩動物公園の一部の個体を上野動物園にも移動しました。)。そのクロツラヘラサギが今年は6羽孵化し、5羽が成長しています。飼育総数は18羽となりました(オス6羽、メス7羽、雌雄不明のひな5羽)。
クロツラヘラサギはコウノトリ目トキ科の鳥で、朝鮮半島中部から北部にかけての海岸沿いで繁殖し、台湾・香港・ベトナムなどで越冬し、日本にもまれに冬鳥として飛来します。ワシントン条約などでの保護対象にはなっていませんが、現在、世界の生息数は 950羽といわれており、絶滅が心配されています。
多摩動物公園では13年前の1989年以降、朝鮮大学校師範教育学部学部長・鄭鐘烈先生の協力を得て、絶滅が心配されているクロツラヘラサギの繁殖に取り組んできました。1989年3月には朝鮮大学校から2羽寄贈を受け、1991年10月には同校から3羽を「繁殖貸与」として受け入れました(1991年の3羽のうち1羽は死亡)。
1996年には世界で初めてクロツラヘラサギの飼育下繁殖に成功。自然育雛で3羽が育ちました。1998年には人工育雛での成育に成功し、その後は順調に繁殖しています。
今回、朝鮮大学校から寄贈および貸与を受けた4羽を含む3ペア(計6羽)が18卵を産みました。朝鮮大学校へは5卵を譲渡し、当園では残る13卵から6羽が孵化。現在5羽が成育中です。なお、朝鮮大学校でも1羽が育っています。
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