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チンパンジー「ジン」、道具を使ってジュースをなめるようになりました!
 └─2011/03/04

 多摩動物公園には、枝を器用に使って人工アリ塚の中のジュースを取り出し、一生懸命なめているチンパンジーがいます。それはオスの「ジン」(2歳8か月)です。ジンがこうしてジュースをなめるようになったのは最近のこと。群れで育ったほかの子どもにくらべると、1年遅い成功でした。

 チンパンジーは子どものころ大人の行動を観察し、生きていくための知恵や群れのルールを学び、練習しながら身につけていきます。とくに1歳ごろまでは母親のそばをあまり離れず、母親の行動をいちばん近くで見て学びます。アリ塚でのジュースなめ行動も、多摩生まれの子どもたちは、たいてい1歳のころにできるようになります。

 一方、母親による育児がうまくいかなかったジンは、飼育係の手で育てられました。学習のための大切な時期を群れから離れて過ごしたジンが、チンパンジーとしてうまくやっていけるのか、私たちはずっと心配していました。

 しかし、メスのサザエを「養母」とすることで群れ入りに成功したジンは、これまでの遅れを取り戻すかのように日々たくましくなり、その成長ぶりは私たちをたびたび驚かせました。
ニュース「飼育係の見たチンパンジー『ジン』の群れ入り」(2010年08月13日)

 ジンは当初、サザエがアリ塚を使うところをじっと見つめていました。その後、サザエが利用する枝に触り、また、ジュースをなめさせてもらうようになりました。そしてある日、自分で枝を手に取り、サザエのまねをしてアリ塚の穴に差し込みました。ジュースのついた枝を引き抜くとジュースをなめ、何度も同じ行動を嬉しそうに繰り返すようになりました。今では自分で使いやすい枝を探し出し、ぎごちなかった動作もさまになってきました。

 最近はアリ塚だけでなく、ほかの遊具「UFOキャッチャー」や「知恵の木」の穴にも、ときどき枝を差し込んで挑戦しています。

 群れには、サザエ以外にもお手本となるお兄さん・お姉さんチンパンジーが大勢います。彼らと一緒にすごしながら、ジンはこれからもたくさんのことを学んでいくでしょう。ジンの成長に今後も目が離せません。

写真上:サザエがジュースをなめるところを見つめるジン
写真下:自分でジュースをなめることができた

〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上 純〕

(2011年03月04日)



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