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チンパンジーの新しいなかま「アラシ」
 └─2010/04/23

 2010年4月7日、愛知県の豊橋総合動植物公園から多摩動物公園に、16歳のオスのチンパンジー「アラシ」が来園しました(1993年12月生まれ)。これまで多摩動物公園には繁殖可能なオスが1頭しかいませんでした。そのままでは個体どうしの血縁関係が近くなってしまうため、あらたな血統のオスとして、アラシに白羽の矢が立ったのです。

 アラシを乗せて豊橋から出発した車は、多摩動物公園に4月7日の午後到着。いよいよチンパンジー舎への搬入作業です。アラシの体重60キログラムを足して計 280キログラムにもなる輸送箱を台車に乗せて運び入れ、6人がかりで検疫室まで運び入れました。

 箱を飼育部屋の扉にしっかりと固定。スタッフに見守られながら、箱の扉を開けると、そのとたん、アラシは脱兎のごとく飛び出し、部屋をぐるっと回った後、こちらの心配をよそに、餌をパクパクと食べ始めました。私たちも「これだけ元気に餌を食べられればもう安心」とホッと胸をなでおろしました。

 その後も、物音一つ立てないほど静かなアラシですが、餌のときだけは元気一杯です。好き嫌いがほとんどなく、何でもよく食べますし、あっという間に平らげてしまいます。私たちが部屋の前を通ると「何か食べ物くれるの?」というように期待を込めたまなざしで近づいてきて、餌をもっていることがわかると、体を大きく上下させて全身で喜びをあらわし、「早くくれ!」「もっとくれ!」と催促してきます。あまりに豪快な食べっぷりは、「誰も取らないから、ゆっくり食べなよ?」と注意したくなるほどです。

 アラシが飼育室内で落ち着いてきたので、飼育の日のイベントを開催した4月17日から19日の3日間、チンパンジー舎の屋内展示場に出してみることにしました。遊具のない検疫室から移動してきたアラシは、天井についているハンモックやロープを少し怖がり、不安げな声もあげていましたが、またしても不安より食欲がまさったのしょう、すぐに餌を食べはじめました。

 屋内展示場のシャッターを開けて外が見える状態にすると、アラシは興味津々のようすで外を眺めていましたが、ガラスの近くにある餌の模型を食い入るように見つめている姿には、思わず吹き出してしまいました。その後、お客さんの姿を見てもときどきガラスをたたく程度で、落ち着いていました。

 こうして、アラシの多摩でのくらしはスタートしました。これから群れの中でくらすための練習が始まります。アラシをご覧になれるのはもう少し先のことになってしまいますが、一日でも早くアラシが群れ入りできるよう、私たちもアラシとともにがんばります。

 多摩動物公園のチンパンジーのあたらしいなかま「アラシ」を、どうぞよろしくお願いします。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上純〕

(2010年04月23日)



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