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ゴールデンターキンの爪切り
 └─2009/11/20

 2009年10月28日、ゴールデンターキン「ベーベ」の爪切り(蹄切り)をしました。ベーベはターキン舎の裏にある予備放飼場にいます。生まれてすぐ新生児肺炎にかかり、それが原因で白内障をわずらい、右眼は失明、左眼は明暗がわかる程度になってしまいました。堀のある展示場だと落ちてしまう危険があるため、堀のない平らな予備放飼場に毎日出ています。

 目が見えず、行動が制限されてしまうためか、前脚の爪(蹄)が伸びてしまうので、毎年麻酔をかけて爪切りをおこなっています。しかし、昨年は妊娠の可能性があったので麻酔がかけられず、爪切りができませんでした。そのため爪がかなり伸びてしまい、左前脚は130ミリ、右前脚は250ミリもの長さ(写真上)になっていて、かなり歩きづらそうにしていました。

 爪切り前日、獣医師の指示にもとづき、夕方からベーベを絶食・絶水にしました。麻酔を使うと、麻酔薬の作用で誤嚥(食べ物などを気管内に飲み込んでしまうこと)する恐れがあるからです。

 予備放飼場から部屋に戻ってきたべーべは、いつも部屋にあるはずの餌がなく、とまどっていました。私の匂いを嗅ぎつけて立ち上がり、「どういうことなのよ?」と言っているようでした。ほかの個体はよく立ち上がりますが、ベーベが立ち上がる姿をみたのは初めてでした。

 爪切り当日は放飼せず、隣の部屋に移動させてから、獣医師と応援の飼育係が加わって爪切りが始まりました。まず、ベーベに麻酔銃で麻酔薬を投与し、部屋を暗くしました。暗くして静かにしていると麻酔の効きがよくなるのです。

 麻酔が効いたのを確認後、ベーベの部屋にいっせいに入り、前脚2本の爪を、2人の獣医師が同時に切り始めました。左前脚は剪定ばさみで切りましたが、右前脚の爪は長くなりすぎていたため、竹を切るノコギリで切りました。

 遅くとも1時間で覚醒させると説明を受けていましたが、ベーベが思ったより早く嘔吐し始めたので、すぐ覚醒作業に入りました。爪切りは予定より早く完了し、前脚の爪はすっかり短くなりました(写真下)。麻酔からの覚めもよく、数十分後には餌を食べはじめました。いきなり前脚の爪が短くなり、歩きにくくなるかもしれないと心配していましたが、ベーベの歩き方は良好で、爪切りは無事終了しました。

 翌日の朝、ベーベは何ごともなかったかのように、通常の量の餌を食べ、満足しているようでした。はたしてベーベは自分の爪が短くなったことに気づいているのでしょうか……?

写真上:爪切り前(右前脚)
写真下:爪切り後(右前脚)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 下重法子〕

(2009年11月20日)



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