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チンパンジーの空き缶回収機、利用広がる!
 └─2009/07/24

 こちらのニュースで、チンパンジーの「ミル」が空き缶回収に成功したことをお伝えしました。放飼場にある「自動販売機」は、用意されたコインをチンパンジーが投入するとジュースが出てくる機械ですが、「空き缶回収機」は、缶を投入するとコインが出てきます。空き缶でコインを手に入れ、ジュースを買えれば空き缶回収成功!です。

 お伝えしたとおり、2008年9月22日、メスの「ミル」(当時5歳)が初めて空き缶回収に成功しましたが、それ以降、ミルは他の個体にジュースをとられないよう工夫していたこともあり、この行動は群れの中になかなか広がりませんでした。しかし、今年(2009年)の6月下旬から7月にかけて、ついに他の個体も空き缶回収に成功したのです! 速報でお知らせしたかったのですが、この2週間、嵐のようにいろいろなことがあったので、ようやくここに報告します。

 ミル以外の個体にも「きっかけ」を与えるため、前回と同様、回収機の投入口に空き缶を挟んでおくことにしました。2009年6月12日、放飼場に出したのは、挟まれていた缶を押しこんだことのあるモコ(8歳)とその母親ペコ。回収機に缶が挟んであるのに気づいたモコは、すぐに缶を押しこみました。

 そして6月21日、ペコとモコを放飼場に出すと、今まで回収機を気にもしなかった母親ペコが、その日に限って缶を引き抜いてしまったのです。われわれががっかりしかけたその瞬間、母親が引き抜いた缶をモコが拾い、投入口に入れたのです。次の日、缶を放飼場に転がしておくと、モコは缶を拾い、あたり前のように回収機に投入したのでした。あっさり成功したせいか、4か月もかかったミルのときとは違う、なんともいえない感じ……。

 「モコが成功した原稿を書かなきゃ」と文章を考えていた矢先、モコのようすをじっと見ていたアンナ(4歳)が空き缶に興味を持ち、回収機に投入できるようになりました。空き缶回収が文化のように群れの中で広がったのです!

 アンナはコイン投入と状況判断がうまくなく、自分でジュースを手に入れることができなかったのですが、7月2日、ついに空き缶を回収機で換金し、自販機でジュースを買い、ジュースを飲むことにも成功しました。

 こうしてアンナのことも含めて原稿を書き上げたのですが、7月5日、アンナやモコからコインを奪ってばかりだったベリー(9歳)も空き缶回収に成功。そこで写真原稿も準備し、今度こそ完成、と思った7月11日、なんと3歳のミカンがジュースの購入に初めて成功し、しかも、偶然なのか空き缶を1度だけ投入することに成功したのです。

 「す、すごい! すごいけど……また書き直さなきゃ……」

 そんな感じでようやく原稿を書き上げました。自販機が使えるのは11個体、空き缶回収機を利用できる個体は4個体になりました。チンパンジーの森に、ようやくリサイクルブームが到来したようです。野生で見られるように、一部の個体の行動が群れの中で広がっていくようす、かれらの駆け引きのようすは、チンパンジーの知能の圧倒的な高さのあらわれです。

写真上:回収機に空き缶を入れるモコ
写真中:自販機でジュースを「買う」モコ
写真下:ジュースを飲むアンナ

・東京ズーネットBB「チンパンジーの『空き缶回収』」(2008年10月撮影)

〔多摩動物公園北園飼育展示課 木岡真一〕

(2009年07月24日)



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