多摩動物公園の昆虫園では、一年を通してたくさんのチョウやバッタなどを見ることができますが、じつは、昆虫を一年じゅう展示するためには、裏側でさまざまな工夫があってこそできることなのです。今回は、昆虫飼育係ならではの仕事のひとつをご紹介します。
昆虫園ではダイトウクダマキモドキというバッタのなかまを飼育しています。この昆虫は八重山諸島に生息し、植物の葉を食べますが、多摩動物公園では、一年中手に入る小松菜を与えています。
しかし、この小松菜は人間用に栽培されたものなので農薬が使われています。とくに虫が増える夏場は農薬が大量に使われ、そうやって育てられた小松菜をダイトウクダマキモドキに与えると、一晩で全滅してしまうこともあるのです。
そこで、昨年(2008年)の夏は、小松菜のかわりになる植物を園内で探してみました。いくつか見つかった植物のうち、夏期に継続して採取してもなくなる心配がないのがギシギシでした。どこにでもある「雑草」ですが、ダイトウクダマキモドキに与えてみると食いつきがよく、幼虫も元気に育ち、栄養的にも問題がなさそうなので、夏場のえさとして採用することになりました。
ただ、夏の暑い盛りに、腰をかがめてたくさんのギシギシを採取するのは、なかなかの重労働でした。
ダイトウクダマキモドキだけでなく、昆虫園には園内で採取した植物をえさにしている昆虫がたくさんいます。広い園内のどこにどんな植物があるかをおぼえるのも、昆虫飼育係の大事な仕事の一つなのです。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 牧村さよ子〕
(2009年03月20日)
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