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アフリカゾウ「アコ」の室内生活
 └─2008/11/28

 多摩動物公園のアフリカゾウのメス「アコ」が部屋に戻らなくなったことは、以前のニュースでもお知らせしました。

 そもそものきっかけは、2006年8月にオスのタマオが急逝したことでした。大きくて存在感たっぷりのタマオがいたときは、タマオへの遠慮が先だって、メスどうしの揉めごとはあまりなかったのですが、タマオがいなくなると、残るメス4頭は自由に行動するようになり、関係がギクシャクしてしまいました。

 とくに、もともと相性のよくなかったアコとアイは、外の運動場で柵越しに争うようになりました。室内でもチーキとアイが日常的に柵越しに争うようになり、チーキは何度も牙を折ってしまいました。

 そこで2008年3月、ゾウたちの部屋を変更しました。チーキとアイを、柵ではなく扉で仕切れる部屋に移し、アコは屋内展示室に面した部屋にしました。それ以来、アコは部屋の出入りを渋るようになったのです。

 原因として、部屋が変わったことに加え、出入りの際、関係のよくないアイやチーキの部屋の前を通らなくてはいけないことなどが考えられますが、はっきりとした理由は分かりません。

 自力で出入りをしたこともありましたが、2008年4月上旬には部屋に戻れず、一晩中外で過ごすことになりました。夜を外で過ごすのは、40年以上多摩動物公園でくらしてきて初めてのことだったので、私たち担当者もアコを見守るために泊り込みました。

 1頭で過ごす夜はさすがに不安なのでしょう。アコは一晩中歩き続けていました。8月になると、ますます部屋に戻ろうとせず、4晩続けて外で過ごすこともありました。朝を迎え、40年以上ともに過ごしてきたマコが外に出てくると、アコもある程度は落ち着くものの、寝ずに歩き続けたため、いためた足を引きずるようになってしまいました。そのため、室内での安静が必要と判断し、外に出すことを見合わせています。

 この間、メスたちの関係改善をはかるため、運動場に出す組み合わせを変え、マコとチーキをいっしょにするようにしました。マコとチーキが同じ運動場に出るのは、約5年ぶりのことです。初めは2頭ともかなり緊張していましたが、今では落ち着いて過ごしています。

 一方、アイは1頭で外に出ていますが、意外にもさびしそうなそぶりは見せず、のびのびとしてプールに潜ったり、遊具で遊んだりしています。寒くなった今でもプールに入ることがあります。運がよければ、アイの豪快な遊びを見ることができるでしょう。

 室内で過ごすアコは、とても落ち着いています。日中は自室から隣のマコの部屋に移って過ごしていますが、室外の通路には自由に出られるようにしてあります。ただし、通路に置いた餌をとりに出ることはありますが、長時間通路にとどまることはありません。

 また、数日ごとに体を洗い、赤玉土を与えて土浴びができるようにしています。皮膚のケアにもなりますし、気分転換にもなっているようです。

 アコのようすは屋内展示室の外から見ることができます。少し距離があるにはあるのですが、繊細なところもあるゾウですので、どうぞ静かに見守ってください。今後は、各個体のようすを見ながら、アコを外に出せるように考えていきます。

写真上 :マコの部屋にいるアコ
写真中上:通路に出たアコ
写真中下:通路に置かれた餌を食べるアコ
写真下 :屋内展示場の外から見たアコの部屋

〔多摩動物公園北園飼育展示係 櫻井佑子〕

(2008年11月28日)



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