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主食は竹なのに……レッサーパンダの花花
 └─2008/10/31

 ジャイアント「パンダ」やレッサー「パンダ」──「パンダ」は現地の言葉で「竹を食べる者」を意味する niyala-ponga(ニヤラ・パンガ) から来ているとも言われています。多摩動物公園では8頭のレッサーパンダを飼育していますが、かれらも毎日たくさんの竹を食べ、元気にくらしています。

 ところがある朝、いつものようにレッサーパンダたちに手渡しでリンゴを食べさせていると、花花(ファンファン)の口から細い竹がぴょこんと出ているのに気がつきました。引っ張ってみましたが、まったく動きません。担当獣医と相談した結果、「しばらくようすを見て、どうしても取れないようだったら麻酔をかけて取り除きましょう」ということになりました。

 花花は2008年6月24日にマリモを産み、現在子育て中。麻酔薬は母乳を通して子に伝わってしまうので、できればかけたくありません。そう心配しながらしばらくようすを見ていたのですが、竹は取れるようすもなく、花花はえさを食べづらそうにしていたので、ついに麻酔をかけることにしました。

 麻酔当日、いつものように朝から花花親子を出し、マリモをたっぷり遊ばせました。午後、マリモが疲れて寝ているあいだに、花花の処置をパパッとやってしまおうという計画です。

 午後、寝ているマリモをそのままにして、花花を隣の部屋に移し、そこで輸送ケージに入れました。突然のことに花花は「ゲゲッ」と鳴いて怒っています。いつもはおっとりとしている花花も、やっぱり野生動物なんだなぁと妙なふうに感心してしまいました。

 動物病院では、輸送ケージごと大きなビニール袋で包み、その中を吸入麻酔で満たすという方法で麻酔をかけました。麻酔がかかったら口を開け、竹を取るだけです。さいわい竹は歯に挟まっているだけで、他の部位には刺さっておらず、化膿も見られなかったため、竹を取り除いた後は消毒をしておしまいです。全所要時間は30分ほどでした。

 麻酔からさめ、部屋に戻った花花は、ふらつくこともなく、大好物のリンゴもシャクシャクと食べていました。マリモも巣箱の中でおとなしくしていたようで、一同で一安心しました。

 今回のできごとは、「竹を食べる者」として、かなり不名誉なのではないでしょうか? それでも、なんとなく笑えてしまうのも、レッサーパンダのキャラクター(?)のおかげかもしれません。

写真上:ビニール袋に入れて吸入麻酔
写真中:花花治療中
写真下:こんなのが挟まってました

〔多摩動物公園南園飼育展示係 高村里美〕

(2008年10月31日)



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