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巨大フジツボ、ピコロコの展示
 └─2008/05/02

 東京湾でも桟橋や岸壁に近づくと、びっしりと1センチ程度の貝殻のようなものが着いているのを見ることができます。よく観察すると、どれも小さな富士山のような形の殻で、その頂上に穴が開いているのがわかります。これらはフジツボという生き物のなかまで、貝殻のようなものに入っていますが、貝ではなく、エビやカニに近い生物です。

 フジツボのなかまは、生まれたてのころはエビやカニと同じくプランクトンとして生活し、水中の岩など、気に入った場所に固着して殻を作り、以後まったく移動せずに大きくなるのです。

 日本中の海辺でフジツボを見ることができますが、葛西臨海水族園では、日本では見ることのできないくらい大きなフジツボ、「ピコロコ」を展示しています。葛西臨海水族園の「世界の海」エリアの「チリ」の水槽に展示しているピコロコは、殻の直径が7センチ程度、殻の高さが10センチ以上にもなる大型のフジツボで、「チリ」の水槽の名にたがわず、実際に当園の職員がチリまでおもむいて採集してきました。

 小さなフジツボではわかりにくいのですが、ピコロコを観察していると、殻の上に開いた穴から白っぽい熊手のようなものが、まるで手招きをするように出たり入ったりするのを見ることができます。これは蔓脚(まんきゃく)というもので、エビやカニの脚にあたる器官なのですが、フジツボのなかまでは、水中のプランクトンなど、細かい餌を捕らえて食べるための役割を果たしています。

 ピコロコの飼育で難しいことのひとつが餌やりです。ピコロコ自身は移動できないため、ピコロコが蔓脚で餌を捕まえられるよう、水槽の中に長い時間餌を漂わせる必要がありますが、葛西臨海水族園では、ピコロコの餌として、生まれたてのエビの幼生や、他の水槽の魚が産んだ「分離浮遊卵」と呼ばれる浮きやすい卵をあたえています。生きたプランクトンや水に浮きやすい魚の卵をあたえることで、餌が水槽の底に沈まず、ピコロコがより多くの餌を食べられるからです。

 葛西臨海水族園では、フジツボの代表選手「ピコロコ」の展示を10年以上続けています。日本でもありふれたフジツボですが、そのの巨大ななかまをぜひ一度ごらんください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2008年05月02日)



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