出生国のペルーにちなんで「リマ」と名づけられたメスのフンボルトペンギンが、2008年1月4日に死亡しました。
このペンギンは、希少動植物の輸出入を規制する国際条約 CITES(ワシントン条約)が日本で批准間近となっていた1976年、いわゆる「駆け込み」輸入で日本に持ちこまれた野生個体のうちの1羽です。
当時、上野動物園でペンギンの飼育担当だった私は、搬入個体選定の任務を言いつかり、横浜にある動物商の仮飼育場へおもむき、20羽近くいた中から6羽を選びました。そして1976年11月5日、リマは他の5羽とともに上野に到着したのです。
上野動物園でリマは、いっしょに来園したオスとペアになり、6羽の子を育てあげました。1989年、葛西臨海水族園の開園とともに葛西へ移動し、同じオスとのあいだに14羽、別のオスとのあいだに5羽、計25羽の子を残しました。
水族園では、遺伝的な多様性を維持するため、血統管理による繁殖制限をおこなっています。リマがこのようにたくさんの子を残せたのは、野生個体だったために繁殖の機会に関して優遇されたためでもあるのですが、何よりもリマが健康で、子育てがとてもじょうずだったということを証明しています。
リマを飼育していた期間は、上野動物園と葛西臨海水族園、合わせて31年2か月でした。日本到着の半年後に繁殖を始めたので、来園したときには少なくとも3歳以上だったはずです(野生でのメスの繁殖開始は4~5歳と推測されます)。
さらに、ほとんどのメスは死ぬまで産卵しますが、リマは2004年12月を最後に産卵しなくなっていたことからも、死亡時に34歳以上であったことはまちがいないと思われます。最後まで、野生個体らしく「稟とした」姿を見せてくれました。
なお、飼育下のフンボルトペンギンの長寿記録は、桐生が岡動物園での40年間飼育という記録があり、おそらくこれが世界最長と思われます。いずれにしろ、飼育下であっても30年を超えるものは少数なのです。
写真:葛西臨海水族園開園当時のリマ。健康診断を受けているところ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕
(2008年01月18日)
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