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エントツの中身はムシ!? ノーザンフェザーダスターワームの展示
 └─2001/12/14

 「海藻の林」の水槽にあらわれたエントツ群。親指ぐらいの太さのエントツ状の管がニョキニョキとかたまって立ち、そのてっぺんにはフサフサとした羽のかたまりのようなものが見えます。この生き物、いったい何でしょう? じつはこのエントツの中には、細長くてたくさんの節を持つイモムシ様の生き物が入っているのです。気持ちわる~いといわずに、彼らのおもしろいくらしぶりを見てみましょう。

 “ムシ”の正体はケヤリムシ。ゴカイと同じ多毛類の仲間です。エントツ状の管は「棲管」(せいかん)、つまり中身のムシ(虫体)が分泌物で作ったすみかなのです。ケヤリムシはやわらかい体をこの管で守っています。

 管の先のフサフサしたものは、ムシの頭部についている鰓(えら)。鳥の羽のような構造をした鰓が何十本もの集まって、「鰓冠(さいかん)」と呼ばれる冠(かんむり)をかたちづくっています。鰓冠は、餌をとったり、呼吸をしたりするのに使われます。

 ケヤリムシのなかまは棲管ごと岩にくっついて、ほとんど移動しない生活をしています。体を守る管を作り、管の先から鰓冠だけを花のように広げて生活するとは、おもしろい生物ですね。

 しかもすばらしい護身術を身につけています。そのようすは水槽の中でも見ることができますよ。いっしょに展示されているウミタナゴのなかまがケヤリムシの鰓冠を突こうとして近づくと、なんと鰓冠がピューッと目にもとまらぬ早さで管の中にひっこみます。そして敵の気配がなくなると、ようすをうかがうようにソロソロと出てきます。鰓冠にあるたくさんの「眼点」と体に走る太い神経が、すばやい隠れ技を可能にしています(眼点:小型で構造の簡単な光受容器)。

 ケヤリムシは英語で northern feather duster worm。Northern は「北の」、feather duster は「羽毛はたき」、worm は「虫」。鰓冠が羽のはたきに見えることからついた名前でしょう。

 この種類は何十本もの大きな群体をつくることが知られています。展示されている群体も 5~60本ものムシが集まっています。美しいムシの群体を、どうぞごらんくさい。「ピューッ、ソロソロ」が見られるかも。

〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕

(2001年12月14日)



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