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メスからオスへ、トサヤッコの性転換
 └─2007/09/21

 2007年8月18日、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「伊豆七島」の水槽にトサヤッコのメスを2尾追加しました。トサヤッコは、オスとメスの体の模様がまったく異なるため、外見で区別することができます。この水槽では、今年6月にオスが死亡してしまい、その後しばらくメス1尾だけの展示になっていましたが、この時点でメス3尾となりました。

 あらたに追加した個体は、体長14センチと11センチです。この2尾はこれまで別々の水槽で飼育しており、トサヤッコの他の個体といっしょに飼育するのは初めてです。最初からいた個体の体長は推定13センチほどで、この個体はオスがいたときに産卵が確認されています。

 2尾を追加した当初は、最初からいた個体と、追加した2尾のうち大きい方の個体が激しいケンカをしていました。当初、もとからいた個体の方がやや優位で、後から入れた大きな個体は岩陰に隠れてなかなか出てこないこともありました。しかしその後、大きな個体も少しずつ出てくるようになり、追加した2日後には、激しいケンカはなくなり、落ち着いたように見えました。そしてさらに1週間ほどたったころ、期待していた現象が現れました。

 3尾の中でいちばん大きい個体の尾びれの黒い線が少し薄くなり、体の背中側の色が濃くなってきたのです。体の色が変化し始めて1週間たったころには、他の個体の前で体を細かく震わせる行動も見られるようになりました。これは、オスがメスを産卵に誘う求愛行動と考えられます。

 さらに日がたつにつれ、この行動がより多く観察されるようになりました。色が変わり始めて2週間たった9月9日、体の色はオスにかなり近くなり、その1週間後、9月17日にはオスとほとんど変わらなくなっています。

 じつは、トサヤッコはメスからオスへ性転換することが知られています。そこで、大きさの異なるメスを入れれば、オスに変わる個体が出てくると期待していたのですが、予想通り、いちばん大きなメスがオスに変わってくれました。

 いまのところ水槽内での産卵行動は確認されていませんが、この性転換したオスが見かけや行動だけでなく、本当の“オス”になるのはいつか、引き続き観察していきたいと思います。

写真いちばん上はトサヤッコのメス。つづいて、2007年9月2日、9月9日、9月16日の変化のようす。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕

(2007年9月21日)



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