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世界2例目! ミナミイワトビペンギンの凍結精子を用いた人工授精の成功
 └─2024/07/25
 葛西臨海水族園と株式会社海遊館は2016年からミナミイワトビペンギンの人工授精に取り組んでいます。この度、2022年に続き、本種では世界で2例目となる凍結した精子を用いた人工授精に成功し、海遊館で孵化したヒナが順調に成育していますので、お知らせします。

背景
 2011年から繁殖生態の解明と人工繁殖技術の確立をめざした研究を海遊館が始め、2016年に当園と連携し、同年世界で初めて液状保存の精子を用いた人工授精に成功しました。

 2017年には取組をさらに発展させるため、当園と海遊館は共同研究契約を締結し、精子の凍結保存への研究を本格的に開始しました。
2022年には当園で誕生したヒナが、海遊館で採取した凍結精子を用いた人工授精による個体と判明し、本種では世界で初めての成功となりました。なお、孵化したヒナは、残念ながら孵化後2日で死亡しました。


人工授精をするようす(写真提供:海遊館)

状況
 2024年3月~4月に葛西臨海水族園で飼育しているミナミイワトビペンギンから精子を採取し、凍結保存の処理後に輸送し、海遊館のメスに対して人工授精を実施しました。

 人工授精を実施したメスが2024年5月3日に卵を産み、6月4日にヒナが誕生しました。ヒナの血液を用いたDNA検査の結果、凍結保存の精子を用いた人工授精によるヒナであることが判明しました。ヒナの成長は順調で、海遊館のスタッフが毎朝の体重測定や観察で健康状態をチェックしながら、子育てを見守っています。


孵化したミナミイワトビペンギンのヒナ(写真提供:海遊館)

今回実施した人工授精(世界2例目)と結果について
精子の処理人工授精の実施日産卵日孵化日DNA検査の結果(父個体)
凍結保存
4月19日、22日、24日
5月3日
6月4日
人工授精(当園のオス)


精子の液状保存と凍結保存の違い
 液状保存は、精子の劣化を最小限に抑えられますが、保存できる期間が短いことや人工授精と精子採取のタイミングが合わないと利用できないことが欠点です。一方、凍結保存は半永久的に精子(遺伝子)を保存でき、国内外を問わず輸送が可能です。人工授精に最適なタイミングで精子を解凍し利用できるため、より効率的な人工授精が可能になります。また凍結保存の技術が確立できれば、絶滅のおそれがある野生下のミナミイワトビペンギンの種の保存に貢献することもできます。

保存凍結の精子による人工授精が成功した要因
 今回の成功要因は、以下の2点と考えています。
① 受精適期の推測に必要なデータが十分蓄積できており、最適なタイミングで人工授精を実施できたこと
② これまでの取組の成果により得られた、精子を凍結する上で受精を妨げない条件(希釈液の濃度、耐凍剤の濃度、凍結温度、凍結速度など)を満たすことができたこと

今後の取組
 当園と海遊館は、協力関係をより深め、本種における人工授精の技術を確立させます。また、この技術を国内外の水族館や動物園に普及させることで、飼育下での繁殖を推進し、飼育下個体群の健全な維持を目指します。将来的には、絶滅のおそれがある野生下のミナミイワトビペンギンの種の保存にも貢献できるよう、取組を発展させていきます。

日本国内の飼育状況(2023年12月31日現在)
9 園館 112羽(オス65羽 メス45羽 不明2羽)
資料:2023年ミナミイワトビペンギン国内血統登録台帳【(公社)日本動物園水族館協会】

 国内飼育下のミナミイワトビペンギンは、個体群の高齢化が進んでいることや、繁殖が難しいことなどから、個体数が減少しています。当園は、日本国内においてもっとも多い37羽(オス23、メス14)を飼育し、繁殖に注力しています。海遊館では23羽(オス12、メス9、不明2)を飼育しており、この2施設が連携することで、日本国内における本種の健全な個体群の形成に向けた取組を推進しています。
 

ミナミイワトビペンギン

(2024年07月25日)



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