葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「東京湾にもいるこんな生物」水槽では、コウイカを展示しています。
コウイカは温暖で比較的浅い海に生息し、東京湾でも見られるイカのなかまです。東京湾では3〜5月ごろに繁殖期を迎えます。水槽内は屋外より水温が高いため、一足先に繁殖期を迎えました。今回はそのようすをお伝えします。
産卵が始まったのは昨年12月30日で、その少し前からオスが左右の第1腕を上げ、メスにアピールするようすが見られていました。オスはこうした姿勢で求愛することが知られており、メスがオスの求愛を受け入れると、交接とよばれる行動に移ります。
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求愛中のオス(写真左) | 交接するコウイカ |
交接の姿勢はイカの種によって異なり、コウイカの場合はお互いが頭を向き合うようにして腕を絡め合ってくっつけます。一見するとケンカしているようにも見えますが、このときにオスは精子の入ったカプセル(
精莢)をメスの口のまわりに受け渡したり、ほかのオスの精莢を捨てたりしているのです。タイミングがよければ、みなさんもこうした行動を見られるかもしれません。
コウイカは海藻や落ちている枝などに卵を産みつけるため、水槽内では産卵場所としてアマモを用意しています。水槽のアマモをよく見てみると、表面にコウイカの卵を見つけることができるはずです。しかし、「どこに卵があるかわからない」という方もいるかもしれません。それもそのはず、コウイカの卵は敵から見つかりにくいよう、表面に砂をまぶされているのです。
産卵は交接直後におこなわれる場合もあり、その際は産卵前にメスが砂を巻き上げ、腕で器用に砂を抱えるようすも見られます。もし交接を見かけたら、もう少し観察を続けてみるのもおすすめです。
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産卵するメスと卵 | 産卵用の砂を腕に抱え込んだメス |
コウイカは産卵を終えると、間もなく1年という短い寿命を迎えます。コウイカの生涯で最後となる、繁殖行動を見られるのはいまの時期だけです。ご来園の際はぜひコウイカにご注目ください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 古橋保志〕
(2023年02月03日)