今年(2022年)の6月に、「世界の海」エリア「紅海」の水槽でタテジマキンチャクダイを展示しました。
タテジマキンチャクダイは、中部太平洋からインド洋、紅海に広く分布するキンチャクダイ科の魚で、「東京の海」エリアの「小笠原の海4」水槽でも展示しています。
タテジマキンチャクダイの成魚は生息地により形態に違いがあり、「紅海」水槽で展示している「インド洋タイプ」は背ビレの後端が丸く、「小笠原の海4」水槽で展示している「太平洋タイプ」は背ビレの後端が伸長します。どちらのタイプもその海を代表する魚なので、地理的な分布に合わせて、園内2ヵ所で異なる海域の水槽で展示しています。
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インド洋タイプ | 太平洋タイプ |
さて、今回はタテジマキンチャクダイを「紅海」水槽に展示するときの裏話をご紹介します。
以前、タテジマキンチャクダイを展示水槽に収容したとき、先に水槽にいた体の大きなアラビアンエンゼルフィッシュに水槽の隅に追いやられてしまい、バックヤードの水槽に戻したことがありました。そこで今回は、あらかじめアラビアンエンゼルフィッシュを展示水槽から取り出し、タテジマキンチャクダイを入れ、落ち着いてから戻す方法をとりました。こうすることで、水槽内の縄張りや力関係が変わり、同居できる可能性が高まるためです。
広い水槽のなかですばやく泳ぎ回る魚を傷つけないよう捕らえるのは、これだけでも一苦労です。また、たった1尾の追加でも、魚どうしの相性によっては水槽内全体のバランスが崩れることがあるので、ほかの魚の縄張りを一度リセットするように、水槽のなかを掃除棒でかき混ぜたり、レイアウトの擬サンゴを取り外したりしました。
タテジマキンチャクダイを展示してから1ヵ月ほど経過して、水槽になじんだころ、アラビアンエンゼルフィッシュを再び展示水槽へ戻してみました。すると、以前のようにタテジマキンチャクダイを追いまわすようなことはなく、無事に同居展示することができました。
水族園にお越しの際は、鮮やかな魚たちのなかでも存在感抜群のタテジマキンチャクダイをぜひご覧ください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 松本あかり〕
(2022年10月14日)