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多摩動物公園からやってきたアズマヒキガエル
 └─ 2022/06/24
 以前は身近な生き物だったカエルのなかま(両生類)も、東京都内ではくらせる環境が減ってしまい、見られる場所は限られてきました。葛西臨海水族園の「水辺の自然」エリアでは、都内に生息する両生類の展示を通して、こうした現状を伝えています。また、裏側では9種の両生類を多数飼育しており、飼育下繁殖にも取り組んでいます。そのうちの一種がアズマヒキガエルです。


「水辺の自然」エリアでは変わってしまった水辺について紹介している

 アズマヒキガエルは関東に生息し、都市部でも見られる大型のカエルで、昔から「ガマガエル」とも呼ばれ親しまれてきました。最近でも、公園などで見かけた方もいるかもしれません。しかし、それはアズマヒキガエルではない可能性があります。東京都内では、アズマヒキガエルが近縁のニホンヒキガエルと交雑しているとの報告があるからです。ニホンヒキガエルはもともと関東には生息していませんでしたが、人が持ち込み定着してしまったと考えられています。

 こうしたことを踏まえ、私たちはまず多摩動物公園内(以下「多摩」)に生息するヒキガエルの遺伝子を調べ、ニホンヒキガエルと交雑していないことを確認しました。そして、多摩に生息する野生個体を「保全対象地域個体群」として生息状況を確認するとともに、飼育下での繁殖に取り組んできました。

 しかし、困ったことに、最近は多摩で野生のアズマヒキガエルを見かけなくなり、産卵も確認されなくなりました。アライグマによる捕食も疑われますが、原因はよくわかっていません。こうしたアズマヒキガエルの減少傾向は都内全域で見られており、2021年に改訂された東京都レッドリストには、アズマヒキガエルが記載されることになりました。

 しかし最近になって、奇跡的に多摩動物公園のアムールトラの放飼場内などでアズマヒキガエルが合計3匹、見つかりました。小さなころに放飼場内へ入り込んだものの、その後大きくなって出られなくなったと思われます。放飼場内はえさとなる昆虫類が多数生息していることに加え、アライグマなどカエルを捕食する外敵が入れない構造になっていることが、生き残れた要因かもしれません。

 これらの個体は放飼場の外に放しても野外での生存や繁殖できる可能性は低く、また多摩では十分な飼育スペースがないため、葛西臨海水族園で保護することにしました。また、今回保護した個体は飼育下繁殖をおこなっている個体と親戚関係にある可能性が低いため、今後の近親交配を防ぐ意味でも重要な存在となります。保護した個体が飼育下繁殖に加わり、いつの日か子孫が野外に戻れるよう、取り組んでいきたいと思います。


保護されたアズマヒキガエル

〔葛西臨海水族園飼育展示係 古橋保志〕

(2022年06月24日)



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