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アオリイカを成長させるために
 └─ 2022/06/03
 葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「東京湾にもいるこんな生物」水槽では、アオリイカを展示しています。アオリイカは食品としてもなじみがあり、東京湾にもいる身近な生物です。


アオリイカ

 現在展示しているアオリイカ1個体は、水族園で生まれた個体です。2021年7月下旬に東京の海で卵を採集、8月上旬に孵化し、約半年間バックヤードで育て、2022年3月から展示しています。今回は孵化したばかりのアオリイカを育成するにあたり、私がいちばん悩みながら取り組んだ「生きていないえさに食いつかせること」について紹介します。

 卵から孵化したばかりのイカは動いているものをえさとして認識し、興味を示します。孵化した当初は生きている小さなイサザアミや小魚を与えていましたが、イカが成長するにつれて食べる量が増えるため、小さなえさでは足りなくなります。また、常にたくさんの生きたえさを準備するのはとても大変です。
 そこで、より大きなえさとして冷凍のキビナゴを選んだのですが、ふつうに与えてもえさとして認識しません。そのため、与え方を工夫しました。

 まず、解凍したキビナゴをイカの大きさに合わせて約3,4cmに切り、細い棒に刺して与えてみましたが、反応はありませんでした。そこでイカの目の前で、あたかもキビナゴが生きているかのように小刻みに動かしながら与えてみると、腕をキビナゴに向けて興味を示したように感じました。このときは警戒しているのか、5分以上おこなっても食いつきませんでした。
 しかし、こちらも諦めません。数日間、動かし方に気を付けながら粘り強く給餌し続けると、しだいに腕を広げてえさに興味を示すようになり、つかみかかるようになりました。一度食いついても次の日には食いつかないときがあり、今の動きがよくなかったのかと悩みながら根気強く続けました。食いつき始めたころは少しかじる程度でしたが、最終的には水中に落とすだけで食いつき、丸々1尾食べるようになりました。


【動画】アオリイカへの給餌のようす

 イカやタコのなかまは頭足類と呼ばれ、頭から腕が出ているようなユニークな身体の構造をしているとともに、えさを捕まえる方法や一瞬で体色を変化させるなど魅力満載で、魚類以外の海洋生物として欠かせない展示種のひとつです。将来的には水槽内で繁殖させ、展示生物を維持できるようになればと思って、いまも試行錯誤を続けています。

 ぜひ、水族園にいらした際には水族園生まれのアオリイカを近くで観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加藤舞〕

(2022年06月03日)



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