葛西臨海水族園の「水辺の自然」エリアでは、東京近郊の懐かしい水辺の風景を再現するためにさまざまな植物を植えており、四季折々の花を楽しむことができます。
日に日に寒さが増している11月上旬現在、夏に「流れ」の水面に大きく浮かんでいたオニバスの葉や鮮やかな花も枯れ、川岸のススキは白い穂が風に吹かれて、どこかさびしげな景色です。
秋も深まり、すっかり秋枯れの様相ですが、そのなかで鮮やかな黄色い花を咲かせている植物があります。それはツワブキです。
「水辺の自然」観覧通路脇に生えるツワブキ
キクに似た鮮やかな黄色い花を咲かせます
本来、海岸や海辺に近い山などに自生している植物ですが、古くから食用や薬用としても利用されてきた歴史があり、我々にとって身近な植物のひとつです。
丸く深緑の葉を持つツワブキは、同じキク科のフキと見た目がよく似ていますが、葉が厚く光沢があるなどの違いがあります。名の由来は諸説ありますが、つやのあるフキ「ツヤハブキ」もしくは厚い葉のフキ「アツハブキ」が訛り「ツワブキ」と呼ばれるようになったと言われています。
今まさに見ごろを迎えているツワブキは10月から12月いっぱいくらいが開花時期で、キクに似た黄色い花をたくさん咲かせます。気温が下がるこの時期には他に開花する植物が少ないためか、吸蜜性の昆虫たちの貴重な蜜源にもなっています。
ツワブキの花は吸蜜性昆虫にとって晩秋の貴重な蜜源になります
そして季節が移り替わり、冬を迎えた年明けごろには、黄色い花が白い綿毛状の種子へと変化し、風に乗って周囲へ拡散していきます。このように増えていくツワブキは、海沿いに建っている葛西臨海水族園の環境に合っているためか繁殖力が旺盛で、放置しておくとあたりがツワブキだらけになってしまいます。「水辺の自然」の景観をつくるうえで上流部分に生えていると不自然なので間引きをおこない、下流部分にある程度残すように管理をしています。
葛西臨海水族園の「水辺の自然」へお越しの際は、ぜひツワブキをはじめとした植栽にも目を向けて、季節の移り変わりを感じていただければと思います。
〔葛西臨海水族園教育普及係 服部詠一〕
(2021年11月05日)