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シマイセエビの「歩脚」に注目
 └─ 2021/10/08
 今年も早いもので10月がやってきました。10月にはイセエビの産地の多くが漁を解禁しています。

 葛西臨海水族園では、さまざまなイセエビの仲間を展示しています。今回は「東京の海」エリア、「小笠原の海3」水槽で展示しているシマイセエビをご紹介します。


岩場から顔をのぞかせるシマイセエビ

 現在、「小笠原の海3」水槽ではシマイセエビを6匹展示しています。シマイセエビは成長すると頭の先からしっぽの先までの大きさが30㎝以上になる大型のエビで、千葉県の房総半島より南の、太平洋とインド洋の水深10mより浅い岩礁域に生息しています。触角の付け根が青白いのが特徴です。


触角の付け根が青白い

 腹側に注目してみると、左右に5本ずつ、合計10本の「歩脚」と呼ばれる脚があります。先端のするどい爪を岩のデコボコにひっかけて、関節を器用に動かして歩きます。見た目は細い歩脚ですが、力強くしっかりと岩にしがみつくことができます。その強さは、水槽から取り出そうとしても歩脚の1本1本を丁寧に岩からはがさなければならないほどです。

 歩脚はえさを食べるときには「手」のような役割もします。シマイセエビにはザリガニやロブスターのような大きなはさみがないため、口元に近い2対、計4本の歩脚を使い、えさを抱えるように口元まで持っていきます。

 水族園では、えさとしてアマエビを丸ごと与えています。水槽内のすべてのシマイセエビがえさを食べられるように、1個体ずつ長いピンセットを用いて直接与えます。ほとんどの個体はアマエビひとつを食べ終わってから次のえさを受け取るのですが、中にはえさをかかえたまま器用に次のものをつかむ個体もいます。多いときでは1個体が10個ほどのアマエビを食べます。飼育担当者になって、えさを食べるところを初めて間近で観察したときには、大きな歩脚を繊細に動かして小さなえさをつまむようすに、とても驚きました。

 えさの時間は週に2回で時間も決まっていないので、ご覧いただくのは難しいですが、水族園2階にある情報資料室でシマイセエビがえさを食べる映像をご覧いただけます。

 来園された際には、ぜひ、彼らの体のつくり、特に歩脚に注目して観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加藤舞〕

(2021年10月08日)



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