アミメハギは、日本では房総半島より南に生息し、浅い岩礁の海藻が生えているところやアマモ場などで見られます。成魚でも体長3~6cmほどにしかならない小型のカワハギ科の魚で、体に白い点々の網目模様があるのが特徴です。葛西臨海水族園では、東京の海エリア「アマモ場」水槽で展示しています。
アミメハギの繁殖期は春から秋で、この時期、水槽の中でもオスがメスに求愛するようすが見られます。まず、オスとメスを見分けてみましょう。
見た目はほとんど同じですが、オスは尾びれの付け根に小さなトゲ状のウロコを持つことと、繁殖期になると「婚姻色」といって体の色が変わことが特徴です。口と背中にある細長い背びれ、その他にも腹びれ、体の真ん中から後ろにかけての体の縁部分、尾びれの模様などが黒ずんだ色になるのです。婚姻色が濃く出ているオスは見分けやすいので、探してみてください。
婚姻色が現れているオス
オスを見つけたら、しばらく観察してみましょう。尾びれを扇子のように大きく広げて上下に小刻みに振るようすが見られるかもしれません。これは、求愛行動のひとつです。
じつは求愛行動はこれだけではなく、3つの段階があります。まず、相手の横に並んで体の側面を向けます。次に頭を下げて大きく広げた尾びれを上げ、背びれのトゲを体につけて腹びれを広げます。そして、最後に背びれのトゲを上下にパタパタと動かし、尾びれを上下に小刻みに振ります。
尾びれを振るのは一瞬ですが、いつもはゆったりとした動きのアミメハギが、このときは力強く尾びれを動かすので目を引きます。
求愛するようす(左がオス)
また、一連の行動はメスにだけおこなわれるわけではなく、オスどうしの争いのときにも見られます。水槽内でもお互いに体の側面を向け合いながら争うようすが見られることがあります。相手が途中で逃げ出せば争いは終了します。
【動画】オスどうしの争い
アミメハギの産卵は朝方におこなわれるので、そのようすを見ることは難しいですが、求愛行動やオスどうしの争いなどは昼間にも見られます。繁殖期にしか見られないアミメハギの行動に注目してみてください。
〔葛西臨海水族園教育普及係 豊田千春〕
(2021年07月09日)