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カキ殻を利用するトサカギンポに注目!
 └─ 2021/06/18
 「葛西の海1」水槽では葛西臨海水族園のすぐ近くの海辺でみられる、岩場やカキ類が群生する場所を再現し、そこにくらす生き物を展示しています。食用としても親しまれるマガキなどのカキ類が群生した複雑な構造は、海岸のカニや小さな魚たちにとって格好の隠れ家となります。

 この水槽で展示しているトサカギンポは、カキ殻を生活の場としてだけではなく産卵場としても利用しており、繁殖期になるとメスがカキ殻の中に卵を産み付け、オスが孵化するまで卵を抱えるようにして守ります。カキ殻の中には潮が引いてもわずかに水が残るので、トサカギンポのオスは次に潮が満ちるまで卵を守り続けることができます。


カキ殻に入るトサカギンポ

 水族園でもトサカギンポがカキ殻を利用するようすを見せられないかと考え、水槽内のレイアウトを見直しました。以前は砂の上にカキ殻を並べた平面的なものでしたが、水族園の近くの海辺には、岸壁に沿って広がったカキ類が立体的な構造をつくりだしています。そのようすを模して、新しいレイアウトをつくりました。


新しいレイアウトになった水槽

 トサカギンポは水槽内でカキ殻にも入り、新しいレイアウトに慣れてきたようです。すると、レイアウトを変えてから3週間が経ったころ、水槽一面に2~3ミリメートルの小さな生き物が泳ぎ回っているのを見つけました。数匹取り上げて調べてみると、トサカギンポの子どもであることがわかりました。


【動画】水槽一面を泳ぐトサカギンポの子ども

 自然下でカキ殻を利用して繁殖するトサカギンポが「葛西の海1」水槽で卵を孵化させることができたのは、新しいレイアウトがトサカギンポにとってよい環境になっているからではないかと考えています。

 今後も生き物の自然な動きが引き出せるよう、工夫を続けていきます。みなさんも水族園にお越しの際は、カキ類の複雑な構造の中でくらす生き物がどんな動きを見せるのか、じっくり観察してみてはいかがでしょうか。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 八木花乃香〕

(2021年06月18日)



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