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クラゲらしくない北極のクラゲ
 └─ 2021/06/10
 水族園の「世界の海」エリア「北極・南極の海」コーナー「北極1」の水槽に新しくマナニア・アトランティカ(Manania Atlantica)というクラゲの仲間を展示しました。

 クラゲというと水の中をふわふわと漂うミズクラゲのようなイメージを思い浮かべるかと思いますが、このクラゲは一見すると半透明の美しいイソギンチャクのように見えます。しかし十文字クラゲ綱シャンデリアクラゲ属に分類される、れっきとしたクラゲの仲間です。日本でも、北海道のアマモ場にシャンデリアクラゲ属のウチダシャンデリアクラゲ(Manania uchidai)が分布しています。

 十文字クラゲ類の最大の特徴は、体に「柄」を持ち、その柄の先で海藻や岩などにくっついて生活しているところです。クラゲの傘にあたる体の部分は「萼部(がくぶ)」と呼ばれ、その縁に触手が多数、寄り集まった「触手群」と呼ばれるものが8つ並んでいます。


開いた状態のマナニア・アトランティカ
(この個体には触手群が9つあります)

 水族園ではこのクラゲにブラインシュリンプという甲殻類の仲間をえさとして与えており、えさを触手で捕らえて、萼部の真ん中にある口に運ぶために触手群を動かすようすが観察されます。餌が触れた触手群をひとつひとつ折り曲げることもあれば、花が閉じるようにいっせいに動かすこともあります。


【動画】触手群を動かしてえさを食べるようす

 このマナニア・アトランティカは水族園の開園以来、今回が初めての展示水槽デビューとなります。実はこれまでにも、北極から採集してきた海藻や石にポリプなどの小さな状態で付着してきたと思われるものが、予備の飼育水槽で見つかってはいました。しかし、いつの間にか消えるなどして、展示に出たことはありませんでした。今回はこのクラゲが大きく育ち、複数個体を安定して飼育できようになったため、展示することができました。

 クラゲらしくないクラゲをぜひ見に来てください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2021年06月10日)



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