国内で飼育されているフェアリーペンギンを今後も健康に飼育していくためには、飼育個体群の遺伝的多様性に配慮した繁殖を進めることが重要です。そのためには、個体の移動を積極的におこなうなど、飼育園館で連携した取組みが求められます。
そこで、2015年に人工孵化や人工育雛の技術改善で良好な繁殖成績が得られている当園から、2021年4月に産卵された3卵をアドベンチャーワールドに移動しました。移動した3卵のうち1卵が、2021年5月25日に孵化しました
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輸送前に実施した検卵のようす。 卵の先端に見える黒い影がひな | 移動する容器に 受精卵を入れるようす | 移動した卵。右下の卵は 小型の記録計を装着した擬卵 |

孵化したひな
(撮影日:(左)2021年5月25日 (右)2021年6月3日、提供:アドベンチャーワールド)
受精卵移動をおこなった経緯
個体移動は検疫や輸送、新しい環境への馴化など多くの負担が移動個体にかかることになります。そのため、移動個体が繁殖するまでには少なくとも約3年の期間が必要と考えられます。
一方、卵で移動する場合は検疫や移動先の飼育環境への馴化が不要で、移動の負担が軽減されます。したがって、受精卵移動の技術が確立できれば、ペンギンにとってもよりよい移動方法になると考えています。
今後の取組み
今回得られたデータを詳細に解析し、よりよい受精卵移動の方法を検討していきます。また、当園の人工育雛技術などの繁殖技術を飼育園館と共有し、フェアリーペンギンのよりよい繁殖につなげていきます。これらをふまえ、最終的にはフェアリーペンギンの主要な生息地であるオーストラリアから個体への負担が少ない受精卵での移動により、国内の飼育個体群の遺伝的多様性を改善していくことをめざしたいと考えています。
国内の飼育状況
5園館 55羽(オス32、メス22)
資料:2020年度コガタペンギン国内血統登録台帳【(公社)日本動物園水族館協会】より
(2021年06月09日)