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どこが赤い? アカモンガラ
 └─ 2021/06/03
 移動水族館の「うみくる号」ではさまざまな生き物を展示し、出張先でお見せしていますが、昨年新たにアカモンガラという魚を導入しました。ひらひらとした大きなヒレと面長な顔におちょぼ口、なんともユーモラスな外見をしたこの魚は、日本ではおもに関東より南の温かい海にすんでいるモンガラカワハギのなかまです。


アカモンガラ

 濃い藍色をした美しい体色をしていますが、遠目から見ると光の加減によっては黒っぽくも見えます。その姿を一見するとなぜ名前にアカ(赤)とつくのか疑問に思われるかもしれませんが、実はからだの一部が赤色をしているのです。一体どこが赤いのでしょうか?

 正解はなんと、歯が赤いのです。先が尖った円錐形の歯は、特に上あごの2本が成長につれて長く伸び、赤い牙のようにも見えます。英語ではその見た目からRedtoothed triggerfish(赤い歯のモンガラカワハギ)と呼ばれます。実は日本でもかつては「アカハ(歯)モンガラ」と呼ばれていたのが、いつの間にか「ハ」が抜け落ち、アカモンガラになってしまったという説もあります。


アカモンガラの赤い歯

 モンガラカワハギのなかまは、するどい円錐形の歯と強力な顎を用いて甲殻類やウニの殻を割って中身を食べたり、岩についている海藻や海綿類をかじったりする雑食性の種が多いのですが、アカモンガラはこの仲間では珍しく、プランクトン食性が強いのが特徴です。海のなかでは潮の流れの強いところに群れで集まり、流れてくるプランクトンを食べる生態が知られています。水槽内でも、エビやアサリなどを自慢の赤い歯で力強くかじるだけでなく、他の魚に与えた細かい餌を、ぱくぱくと器用に食べる姿が観察できます。

 残念ながら現在移動水族館は緊急事態宣言発出に伴い活動休止中ですが、感染状況が落ち着き、みなさんが移動水族館に参加された際は、ぜひアカモンガラの赤い歯に注目してみてください。

〔葛西臨海水族園教育普及係 服部詠一〕

(2021年06月03日)




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