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深海のお掃除屋さん、モロトゲアカエビ増殖中!
 └─2021/04/23
 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「深海の生物2」の水槽では、「深海の生物1」の水槽よりもさらに深く冷たい海に生息するサケビクニンやジャイアントアイソポット(ダイオウグソクムシ)を展示しています。


「深海の生物2」水槽

 中でも水槽のあちらこちらにいる、白くて長い一対の触角をピンと伸ばしているのがモロトゲアカエビです。モロトゲアカエビは日本海の島根県より北側、水深200〜300mの砂泥底に生息しています。全身が赤と白の縞模様をしていることから、市場では「シマエビ」という名前で食用として流通しています。お料理屋さんやお寿司屋さんなどで食べたことがあるかもしれません。


擬岩にしがみつくモロトゲアカエビ

 水族園ではえさとしてサクラエビやオキアミをミンチ状にしたものを与えていますが、他にもサケビクニンやダイオウグソクムシの食べこぼしであるアマエビの破片やアジの破片を見つけ、ハサミ脚を器用に動かして食べています。食べこぼしが残っているとそれが腐って水質が悪化し、一緒に展示している生き物たちが病気になる原因となります。つまり、モロトゲアカエビはお掃除屋さんとしてこの水槽に欠かせない存在なのです。

 そんな大活躍のモロトゲアカエビがいる水槽内をよく観察してみると、岩影や壁に同じ模様をした小さなエビがたくさんいます。


モロトゲアカエビの稚エビ

 じつはこの小さなエビはモロトゲアカエビの稚エビです。水槽内で繁殖して数を殖やしています。一般に、海のエビのなかまの多くは、小さな卵から孵化した後、浮遊生活をしながら脱皮を繰り返し、やがて小さなエビとなり海底に着底します。「深海の生物2」の水槽では、浮遊生活期間にえさとなる小さなプランクトンなどを入れていないため、成長できないはずです。

 しかし、モロトゲアカエビは親がお腹に卵を抱えて守る期間が他のエビよりも長く、1年近くにもなります。また、卵は直径2.5mmほどで、海のエビのなかまとしては大きめです。さらに、卵の中である程度成長し、全長9mmほどで孵化し、すぐに着底して生活します。そのため、この水槽では生まれてすぐに着底し、砂と砂の間にあるゴミや食べこぼしを食べて成長したと考えられます。

 葛西臨海水族園が再開園した際には、ぜひこの水槽で大活躍しているお掃除屋さんを観察してみてくだい。

 また、モロトゲアカエビは性転換することが知られています。詳しくは以前の記事(下記リンク)でご紹介していますのでご覧ください。

・関連記事「性転換するエビ、モロトゲアカエビ」(2015年10月16日)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 関啓汰〕

(2021年04月23日)



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