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下を向いている口はなぜ? マグパイパーチ
 └─2021/04/2
 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「オーストラリア南部」の水槽にはマグパイパーチを展示しています。スズキ目タカノハダイ科のこの魚は、オーストラリア南部やニュージーランド周辺に生息し、幼魚の時期は浅い岩礁域に小さな群れをつくり、成長するとともに水深60mまで生息範囲を広げます。


オーストラリア南部の水槽

 日本近海にもタカノハダイのなかまが生息していますが、食用としては磯臭いと嫌われがちで一般的ではありません。しかし、マグパイパーチは現地のオーストラリアでは食用としてポピュラーなようです。

マグパイパーチ
オールドワイフ

 マグパイパーチの口をよく見てみましょう。“唇”が厚く、小さな口が下を向いていることがわかります。アジやイワシなどは口が正面を向いており、たとえば同じ水槽のオールドワイフは口が正面を向いています(写真)。なぜマグパイパーチの口は下を向いているのでしょうか?

 それは、えさの食べ方にヒントがあります。マグパイパーチはカニや貝類などの無脊椎動物や藻類を食べる雑食性です。砂地では砂ごとえさを吸い込み、鰓孔(えらあな)から砂だけを吐き出してえさだけを食べ、岩場では見つけたえさをついばむように食べる習性があります。小さい口ですが、唇が厚く頑丈なので、砂の中にいるカニや貝を砂ごと吸い込むことができます。また、胸びれの下部が厚く長くなっているので、砂や岩の上でバランスをうまくとって体の向きを変えることなくえさを探すことができます。口が下を向いているのは効率よく食べることに役立っていることがわかります。


【動画】えさを探すマグパイパーチ

 水族園で展示しているマグパイパーチは、水槽の端や擬岩の裏で胸びれを広げて器用にバランスを取りながらよく休んでいますが、下向きの口を使ってえさを探し、砂を吸い込んだり擬岩についた藻をついばんだりする行動もときおり見られます。また、午後に1回、オキアミやサクラエビなどを水面にまいて与えているので、ひれを器用に使って体勢を変えながら水中に漂うえさを食べたり、底に落ちていくえさを目ざとく見つけて食べたりする姿を観察することができるかもしれません。

 このように、生き物本来の行動を展示水槽の中で観察できるのが水族園の醍醐味です。再開園の際には、ぜひ生き物たちの行動をじっくり観察しに水族園にお越しください。

〔葛西臨海水族園 飼育展示係 戸田遥香〕

(2021年04月02日)



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