ニュース
フェアリーペンギン、食べ方の学習
 └─2021/01/02
 葛西臨海水族園では、フェアリーペンギンにえさを与えるとき、キビナゴなどの魚をバットに入れて地面に置き、ペンギンたちがバットの魚をくわえ上げて食べるようにしています。一見何の変哲もない食べ方に思うかもしれませんが、じつはペンギンではあまり見ない光景です。


 ペンギンは本来、海の中で泳いでいる魚や甲殻類などを捕まえて食べるため、地面や地上のものを拾って食べる習性がありません。そのため水族園では、フンボルトペンギンなどのために魚をプールにまき、水中に漂わせて与えています。

 しかし、フェアリーペンギンのえさには粉末状のビタミン剤を混ぜてあるので、薬剤が水で洗い流されてしまわないよう、陸上で与えているのです。ただし、フェアリーペンギンもこの食べ方がすぐできるようになるわけではなく、「学習」する必要があります。

 学習は幼鳥が巣立ちを迎えたころ始めます。まず、幼鳥は魚をえさとして認識していません。そこで初めは、飼育係が幼鳥の口に魚を入れて食べさせます。最初はいやがりますが、えさがもらえることをしだいに覚え、自分から寄ってくるようになります。

 次に、ペンギンの目の前にえさを差し出し、食べさせる練習です。こうやって、目で魚をえさとして認識させるようにします。そして、徐々にバットに誘導し、自分で食べるように促します。

 学習の大事なポイントは「群れの中で」おこなうことです。飼育係から教わる学習と、親や他の個体を見て自分自身で学ぶ学習の2つの効果が得られるので、より早く学習できます。また、フェアリーペンギンの場合、一度食べ方を習得すると、飼育係に寄ってくることはなくなり、群れの中でたくましく成長していきます。

 えさを食べるようすを見ていると、くちばしの使い方がじょうずですぐに魚をくわえられる個体もいれば、なかなか魚をくわえられない個体などもいて、個性が垣間見られます。数羽の食べ方を比べてみたり、1羽だけをじっくり観察することで、あらたな発見があるかもしれません。葛西臨海水族園でペンギンのえさの時間を見る機会があったら、フェアリーペンギンが学習して身に着けたえさの食べ方をぜひ観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 内山幸〕

(2020年01月02日)



ページトップへ