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キラキラ?ピカピカ? 「運河」水槽のヒイラギ
 └─2020/07/31

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアには、東京湾奥の運河の環境を再現した「運河」水槽があります。サッパやボラなど銀色をした魚たちの中でひと際キラキラと輝いて見えるのがヒイラギです。

 ヒイラギは成長しても全長15cmほどの小型の魚で、日本ではおもに本州中部以南の泥や砂地の内湾や河口域に分布し、東京湾奥部に位置する葛西臨海水族園周辺の海でも多く見られます。魚屋に並ぶことはほぼありませんが食べてもおいしく、ハゼ釣りなどの“外道”としても釣れるため、釣りをする方には身近な魚かもしれません。


 じつはこのヒイラギは体におもしろい特徴をたくさん備えています。横から押しつぶしたように薄く幅広い体と、背びれと尻びれに鋭いトゲを備えたその姿は、植物のヒイラギの葉に似ていることからその名前がつけられました。

 薄い体は正面からは細い線にしか見えないため敵から見つかりにくく、鋭いトゲは身を守ることに役立ちます。


 銀色の体色はタチウオと同じ「グアニン結晶板」によるもので、キラキラと光を反射させ、水面から差し込む太陽の光に紛れ込むことができます。また、体の後半部の体表に小さな鱗がありますが、前半部にはありません。かわりに粘液で全体が覆われており、そのぬるぬるで体が傷つきにくくなっています。

 魚が銀色に輝いて見えることを「銀鱗」と表現しますが、これだけキラキラと輝いて見えるヒイラギの場合は、鱗がなくても「銀鱗」と呼べるかもしれませんね。

 さらに、ヒイラギは光を反射させるだけでなく、体の中に発光器を備えており、実際に光ることもできます。光は共生する発光バクテリアによるもので、腹部を光らせることにより、下から見上げると水面からの光と同化して体のシルエットを隠すことができると考えられています。この発光は淡い光のため、明るい「運河」水槽では見ることができませんが、キラキラと光を反射させて泳ぐようすを観察することができます。小さな体に面白い特徴をたくさん備えたヒイラギにぜひ注目してみてください。

〔葛西臨海水族園教育普及係 服部詠一〕

(2020年07月31日)



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